2017 Fiscal Year Research-status Report
生徒にとって望ましい運動部活動の指導の在り方に関する研究
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15K01570
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
深見 英一郎 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10351868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 運動部活動 / 目標設定 / 勝利志向性 / 生徒の意見の反映度 / 生徒の満足度 / 指導者とのコミュニケーション / 自主的・計画的練習 / 愛好的態度の向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
「運動部活動における望ましい指導の在り方」を明らかにするために,以下の2本の研究論文にまとめて投稿し掲載された。 ○深見英一郎・岡澤祥訓(2016)運動部活動における目標設定,勝利志向性,意見の反映度の実態並びにそれらが生徒の満足度に及ぼす影響. 体育学研究, 61: 781-796. 【概要】本研究は,中学・高等学校の運動部活動541部に所属する8048名の生徒を対象に,運動種目別及び学校種別にみたチーム/個人の目標設定,チームの勝利志向性,生徒の意見の反映度,生徒の満足度それぞれに対する生徒の意識の実態並びにそれらが運動部活動に対する生徒の満足度に及ぼす影響を明らかにしようとした。その結果,生徒中心に決定したチーム目標をすべての生徒で共有すること,個人の目標をもち目標達成に向けて計画を立てて努力すること,さらに勝利志向で,練習や試合において生徒の意見が反映されることが生徒の満足度に繋がることが示唆された。 ○深見英一郎・岡澤祥訓(2018)運動部活動の「形成的評価法」作成の試み-生徒の部活動評価の構造に着目して-. スポーツ教育学研究 37-2: 47-60. 【概要】本研究は,中高生の運動部活動に関する形成的評価の構造を明らかにし,形成的評価尺度を作成するとともに,作成した形成的評価尺度の有効性を検討しようとした。その結果,運動部活動の形成的評価は,「指導者との充実したコミュニケーション」,「自主的・計画的な練習」,「充実した取組による愛好的態度の向上」の3因子で構成され,評価尺度の各因子は中高生の両方に共通しており,信頼性も比較的高いことが確認された。また,総合評価項目得点が高かった生徒は,3つすべての因子別得点も有意に高くなったことから,これらの3因子は運動部活動の形成的評価項目として妥当であり,生徒が評価する運動部活動を分析し,理解する上で有効な観点になると判断できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,運動部活動の望ましい指導の在り方を検討するために,指導者及び生徒(部員)に対して2つの質問紙を作成した。1つは,生徒に対して日頃の運動部活動の取り組みを形成的に評価してもらうための調査票である。もう1つは,指導者の主導性/生徒の主体性に対する意識を評価するための調査票である。前者に関しては,先述したように「運動部活動の『形成的評価法』作成の試み-生徒の部活動評価の構造に着目して-」と題してスポーツ教育学研究に投稿し,掲載された。後者に関しては,当初,「運動部活動における指導者の主導性に関する意識と部員の形成的評価との関係」と題して,研究論文にまとめて投稿する予定であったが,まだできていない。 今後,以下のような研究計画を想定している。吉野ほか(2000)が作成した体育授業における教師の主導性に関する意識調査票を踏まえて作成した,運動部活動における指導者の主導性に関する調査票(指導者用/生徒用)を用いて,次のような課題を明らかにする。具体的には,指導者の指導方針はチームの目標・運営にどのように反映されているか,また日頃の練習の目標・内容・方法について,誰がどのように決定・運営しているか,さらにそれらについて生徒の考え・意見がどの程度反映されているか等を調査する。他方で,それらの指導方針及び運営のしかたを生徒はどのように受け止め,実際に個人・チームの成績にどのようにつながっているかを明らかにしたい。これにより,指導者は運動部活動の運営体制づくりに関して重要な示唆が得られると考える。 吉野聡・元塚敏彦・岡沢祥訓・林恒明・高橋健夫(2000)体育授業における教師の主導性に関する意識と形成的授業評価との関係.スポーツ教育学研究, 20-1:19-30.
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Strategy for Future Research Activity |
運動部活動の部員であれば,誰もがレギュラー選手に選ばれ各種大会に出場し試合で勝利したいと切望している。また,選手選考の良し悪しが選手の競技意欲やチームの競技成績を大きく左右させることから,指導者は熟慮を重ねて選手選考を行う。そのため,選手選考は指導者とすべての部員にとって最も高い関心事の1つである。競技毎に試合出場人数は異なるが,多くの部員がいるチームでは,必然的に試合に出場できない部員が出てくる。選手選考の責任者であり決定権者である指導者は,チームが勝利することを最優先に考えて選手選考を行うが,指導者によって選手を選ぶ基準は異なる。例えば,純粋に実力主義でそれまでの練習試合等でよい結果を残した選手を選ぶ指導者もいれば,能力は劣るもののチームのために献身的で,誰よりも練習し努力している選手を選ぶ指導者もいるだろう。しかしながら,部員の実力が拮抗する場合や,能力は高いが努力しない部員と能力は低いが真面目に努力する部員のどちらか一方を選ばなければならない場合には,指導者は思い悩むであろう。レギュラー選手だけでなく,補欠選手も含めてすべての部員が納得できる選手選考が理想ではあるが,必ずしもすべての部員が納得した選手選考が遂行されるとは限らない。少なくとも公平で透明性の高い方法によって公正に選手選考が遂行されることが不可欠である。いずれにせよ,選手選考に関する情報が指導者と部員の間で共有され,それぞれが納得のいく形で選手選考が行われれば,お互いに気持ちよく大会や試合に臨むことができるだろう。 そこで本研究では,指導者と部員両者が納得のいく選手選考の条件を明らかにする。それにより,多くのチームにおいて指導者と部員両者が納得する選手選考の条件を共有し,適切な手続きのもと円満な選手選考が実施できれば選手の競技意欲やチームの競技成績に繋げることができると考えた。
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Causes of Carryover |
大学内の校務に時間がとられ、想定していた研究計画が遂行できなかった。具体的には、全国の中学校、高等学校に訪問し、運動部活動の指導者に対してインタビュー調査を行う予定ができず、研究ができなかったため。
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