2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of regional sports theory through urban-rural comparative study
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15K01595
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
後藤 貴浩 国士舘大学, 文学部, 教授 (20289622)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域スポーツ / スポーツ公共圏 / 地域社会論 / 公私論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、事例地(熊本県・東京都)におけるスポーツ活動(総合型地域スポーツクラブやビーチバレーなど)の補足データを収集し、分析・考察を行った。考察に際しては、徳野貞雄(農村社会学者)の「修正拡大集落論」を参照し、それぞれの活動の維持戦略について検討した。これまで地域スポーツ研究では、固定的な地域に限定しスポーツのあり方が論じられてきたため、地域外との関係性から地域内のスポーツを捉え返すことができなかった。地域で実践される多様なスポーツを「現実的生活基盤」の変容との関係から考察することの重要性が示唆された。 本科研の目的は、都市(東京都)、農村(熊本県)におけるスポーツ活動の事例研究を通して、これまでの地域スポーツ研究の到達点と課題を明らかにすることであった。近年の「スポーツ公共圏論」においては、世代や地域性などに左右されることのない「等価性の連鎖」がより重要視されている。そこでは、「あるべき姿」としての西欧社会の自立した個人と市民社会の公私関係が前提となっている。しかし、日本の公私論では、公と私の重層性や相互転換性が指摘されてきた。つまり、日本では、スポーツ活動を含め地域における様々な社会的実践は、私から公へと発展段階論的に目指されるものではなく、状況に応じて公としても私としても存在するのである。本科研で事例とした農村のスポーツも、単に縮小・消滅するだけの「私」的存在ではなく、限定的な範域では「公」的な活動と認識されていた。また、一見、同好の均質化した人々による都市部のスポーツの中にも、独自の地域的階層性が存在し、そのことが活動地域での円滑な運営を可能にしていることが分かった。 今後の地域スポーツ研究に求められるのは、地域の現実態の綿密な分析を通して立ち現れる「地域の論理」と個々のスポーツの関係を究明することにある。
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Research Products
(4 results)