2016 Fiscal Year Research-status Report
ジュニア競技者のための時空間解析によるサイバネティックス系体力評価システムの開発
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15K01599
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
小林 秀紹 札幌国際大学, スポーツ人間学部, 教授 (40280383)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サイバネティックス / 時空間解析 / 体力評価システム / 慣性センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はジュニア競技者のタレント発掘に資するサイバネティックス系体力評価システムを開発するために,既存の体力テストの解析(高次および階層的因子分析)による一般因子(適正因子)を抽出し,基準関連妥当性を検証するとともに,競技横断的な適性因子の有無を明らかにすることを目的とする。 一昨年および昨年度はカーリングジュニア競技選手のパフォーマンステストのデータより探索的因子分析を行い,高次および階層的因子分析によって一般因子の抽出を試みた。さらに,カーリング日本代表クラス選手においても同様な解析を行い,構造方程式モデルの適用から多母集団同時分析を行い,ジュニア選手と高レベルアスリートの一般因子間の関与の程度を明らかにすることを主に計画した。 体力テストによって得られるパフォーマンスにおけるサイバネティックス系の情報を取り出すため,その外的基準変量となる動作解析より規定される評価変量を得るため,カメラ撮影による映像解析とセンシングデータとのマッチングを行った。これにより得られたデータから評価において有効なパフォーマンス変量を検討する。さらに,サイバネティックス系とエネルギー系の関連の程度を検討する。サイバネティックス系の評価の関連変量として,カーリングフォームの評価項目を作成した。ジュニアサッカー選手には既存の評価項目を適用する。動作に際する主観的な評価を評価項目に基づいて行い,得られたデータに対して項目反応理論を適用し,カーリングフォームおよびサッカーの技能の評価における数量化を行う。カーリングフォームおよびサッカーのサイバネティックス系評価変量の基礎変量とすべく,項目反応理論より得られた困難度を算出した。この困難度はフォームおよび動作の評価変量とあわせて,合成変量を作成し,エネルギー系フィットネスデータとの関連を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度機器購入時期の遅延で停滞していた慣性センサによる動作測定を中心に行った。慣性センサから得られる身体運動計測情報は加速度や角速度であり,角速度の積分演算や重力加速度の変換からデータを得ることができる。また時間軸に沿って変化する現象は動的時系列解析によって分析される。急激な変化が生じたり,非線形性を示すデータ等身体運動における神経系サイバネティックス系の体力を評価する場合は,時間の要素を含む時空間解析の適用が望ましい。そこで非周期的な運動について時間情報を含めた分析を慣性センサから得られる情報の解析を試みた。この結果,並進加速度,ドリフトによる誤差を補正した結果を推定することができた。慣性センサによる時空間解析によって,測定誤差が少なく且つ環境を選ばない身体運動計測が可能であり,新たなスポーツ現場における測定精度の高い測定方法が提案できると考えられた。この結果は日本体育測定評価学会において発表した。これによりフォーム分析における質的評価の量的変量への変換作業に見通しがついた。フォームの質的評価は,現在および過去の日本代表選手が評価の観点および評価項目の作成を行った。評価の観点は大きくデリバリーとスイープに分類し,さらにデリバリーは6種類,スライドの形,フリップとリリースの観点,スイープはフォーム,フットワーク,ストロークの観点に細分化しており,今年度実施する。また,センサーによる測定を予定していたフォーム分析は,人数の確保を踏まえ,カーリングに加え,サッカージュニア選手に対しても同様のアプローチで測定を行っている。現在,フォームの質的評価に関する項目について項目反応理論を適用する準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で実施予定であった体力測定は予定どおり行った一方,データ解析の過程で人数の変更に伴う対応が必要となった。また,本研究課題の主たる目的であるセンサーによるフォーム解析は,初年度の予算が減額となったため,次年度に持ち越した。これにより,予定よりも一年近くの遅延が生じたが,解析プログラム及び測定日程の調整を経て,当初の計画に近づいた。 今後はセンサーによる測定を予定していたフォーム分析を早急に進める。評価変量の解析を進め,カーリングフォームの評価に有効な変量を選定する。これに基づき,これからのフォーム測定においては,カメラ測定とセンサー測定を同時に行い,両評価方法の関連を検討する。方法の妥当性の検証を経て,十分な関係の高さを確認した後,簡便に測定できるセンサーを用いて,ウエイトの強さ等の条件の検討を行う。ウエイトやラインの違いを踏まえ,多くの測定を行い信頼性を中心に分析を行う。個人内変動を分析し,いかなる条件が個人内変動に影響を及ぼすかを検討する。条件による変動がフォームの質的評価の観点と関連するかどうかを踏まえ,フォームの力学的評価における変量と質的評価による量的変量の関連を踏まえ,質的評価と関連の高いフォームの力学的変量の検討を行う。これらの関連の検討結果について,困難度等の重み付けを行い,サイバネティックス系の評価項目としての有効性を明らかにする。 カーリングの測定は人数が十分確保できないため,同時にジュニアサッカー選手を対象に体力テストと項目反応理論による技能評価との関係を解析し,両者の関与度を推定する。
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