2015 Fiscal Year Research-status Report
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けての熱中症予防対策
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15K01605
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
樫村 修生 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (40161020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 和広 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (30398812)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱中症 / 東京オリンピック / 東京パラリンピック / WBGT |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年東京オリンピック・パラリンピックにおける屋外競技開催予定地で7月下旬から8月下旬の環境測定を実施した.一つは,定点観測で,ほとんど会場で実施される競技種目(陸上,テニス,サッカー),もうひとつは移動観測で競技者が時間とともに大きく移動する競技種目(トライアスロン,マラソン,ロードレース)で,気温,相対湿度,黒球温度から求められる熱中症指数WBGTを算出し,日本体育協会から発表されている熱中症予防運動指針から,熱中症発症の危険性を評価した.それにより,2020 年東京オリンピック における選手,観衆,ボランティアおよび競争役員に対する熱中症発症の危険性について検討した.2020 年東京オリンピック予定期間における過去50 年間の気象庁の観察データの解析から,日照の確率は 73.51%となった.過去10年間気象庁の観察データの分析によって,2020 年東京オリンピック開催予定期間におけるWBGT は34.56℃であった.競技会場周辺と気象庁の過去の環境温度の分析から,暑さ指数であるWBGT は,選手,観客,ボランティア並びに競技役員 に対して熱中症の発症の危険性が極端に高い環境であることが明らかとなった. 期間中にロードバイクに環境温度計を設置し,スタートからゴールまでをマラソン競技の走行スピードに相当する時速20km時の環境温度を計測し,熱中症の危険性を評価した.平均WBGTは7月26日が30.44℃で30℃を超え,次いで8月4日が29.62℃,8月9日が26.97℃であった.また,平均乾球温度は, 7月26日が36.91℃, 8月4日が34.55℃,8月9日が32.44℃であった.その結果,走行時に選手が曝露されるWBGTは予想以上に高く,これにマラソン運動による 2 時間以上の体温上昇の負担も加わることから,熱中症を防ぎ良い成績を残すためには暑熱下トレーニングを実施し,十分な暑熱順化が必要になると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに2015年度,本研究に関する学会発表として,8月日本スポーツ健康科学学会にて予定されている東京オリンピック屋外競技会場の環境測定を実施し,開催予定期間のWBGTから熱中症の危険性について報告した.また,気象庁の過去50年間の環境温度観測データから,2020年東京オリンピック開催期間の環境予測も報告した.また,同じ8月には,ランニング学会において,2020年東京オリンピック・マラソン競技コースにおいて,環境温度を測定したWBGTから各地点の熱中症の危険性を報告した.さらに,11月には日本生気象学会において,2020年東京オリンピック・マラソン競技について,マラソンコースを実際に移動(マラソンの速度時速20km)しながら,環境温度の測定を実施し,選手の立場から熱中症の危険性を報告した.また,本研究に関する論文として,日本スポーツ健康科学雑誌に,「2020年東京オリンピック競技開催予定期間における環境温度の予測」を発表した.当初の研究計画どおり進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度も,昨年度と同じように,東京オリンピック・パラリンピック開催予定期間における環境測定を実施しデータの蓄積を行いたい.とくに,マラソンコースにおいて実際にランナーに模擬競技を実施し,選手側の立場から熱中症の危険性の評価を試みる予定である.さらに,民間の気象関係会社と連携して,東京地域において,過去の地点観測された環境データを提供してもらい,競技会場周辺の環境温度が開催予定期間でどのような現状か,観客,ボランティア,競技役員の立場から,熱中症の危険性を評価する.
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Causes of Carryover |
2015年度は,研究補助等の謝金予算額が少なく順調に研究が進んだ.そのため,2016年度は,実験に際して被験者等の人数を増やしより多くのデータを収集したい.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京オリンピックマラソンコースにおいて,テスト走行を実施するため,陸上駅伝選手の被験者謝金のために昨年度の余剰金を使用したいと考えている.
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Research Products
(3 results)