2015 Fiscal Year Research-status Report
バドミントンにおける健常者と身体障がい者のコーチングに関する検討
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15K01606
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
金子 元彦 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (40408977)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 主観的努力度 / 客観的達成度 / バドミントン / 打動作 / ラケットスポーツ / コーチング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではバドミントンにおいて健常者と身体障がい者を対象としたコーチングを行う際の、共通性および相違点を明らかにすることを目的とする。 研究初年度においては、まず研究代表者所属機関において倫理審査を受け、その承認を経た。そののち、身体障がい者バドミントンプレイヤーを対象として、バドミントンのサービスおよびスマッシュにおける主観的努力度(自分の感覚による力の入れ加減)と客観的達成度(主にシャトル速度)の対応関係に着目をし、バドミントンにおける身体障がい者プレイヤーと健常者プレイヤーとの間に存在する共通性および相違点を検討を開始した。対照試技として握力についても測定を行った。主な被験者は車いすバドミントンプレイヤー、上肢障がいバドミントンプレイヤー、下肢障がいバドミントンプレイヤーおよび、大学生バドミントンプレイヤーであった。実験についてはバドミントンのサービス、スマッシュおよび握力について主観的努力度60%から100%まで10%刻みで漸増させたのち、10%刻みで60%まで漸減させる延べ9試技を1シリーズとし、高速カメラを用いた三次元映像を得て、シャトル速度や動作についての解析を行った。 バドミントンのサービス、スマッシュおよび握力ともに主観的努力度を増すとそれに伴ってシャトル速度が増大し、主観的努力度を低下させるとそれに伴ってシャトル速度が落ちた。握力も同様であり、いずれの障がいのプレイヤーともにほぼ同じ傾向であった。大学生プレイヤーについてもほぼ同じ傾向が認められている。試技の違いという点からは同じ主観的努力度間で比較をすると、サービスに比べてスマッシュのほうが相対的に高い客観的達成度となる傾向が認められ、これはクローズドスキルの要素とオープンスキルの要素のいずれが強い動作であるかが影響しているのではないかと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度内に行う予定であった実験については、すべて予定通りに行うことができた。また身体障がい者プレイヤーから得られたデータに対する比較対照として、ほぼ同様の設定で行った研究代表者の先行研究を活用する予定であったが、年度中に比較対照のためのデータも得ることができ、その点では当初の計画以上の進捗であるともいえる。一方で、本研究の場合、得られた結果を被験者に対してどのタイミングでフィードバックするかが以後の実験結果にも多少の影響が生じるものと見込まれることから、特にフィードバックのタイミングについては慎重な検討を重ねてきたが、まだ検討し切れていないのが実情であり、その点では課題も残っている。また結果の「再現性」を検証するために同様の実験を反復して実施してきているが、実験間におけるプレイヤーの技術的な習熟度合い(技術が上がったり、下がったりする可能性がある)についても丁寧に検証を行い、その点を加味した考察が不可欠になると考えている。 初年度に得られた結果をより正確に考察していくためにいくつかの課題が残っているが、全体として順調に進んでいると考えている。特に車いすプレイヤーの特性については、打つ動作を強めるとその反動で車いすが回転運動を起こすが、その様相に対するプレイヤーの自覚がやや希薄であるような聞き取り結果も得られている。車いすプレイヤーの特性については詳細を明らかにしていける手応えも得ており、その点で一定の成果を得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験結果を考察していくためにも、2年度目に計画している聞き取り調査を着実に推進するためにも、初年度以上に研究協力者との連携が必要となる。このことを確実に遂行していくためにも、被験者、調査協力者および研究協力者との連携を密にして、年度当初に具体的な調査、実験等のスケジュールの見通しを再確認する。また、初年度に実施してきた実験についてはデータの信頼性を増すためにも、あと数度の繰り返しの実験が行えれば理想的と考えている。 初年度には主に自然科学的方法論を用いた実験的な研究が主となり、2年度目には聞き取り調査や調査対象者の練習風景の観察など人文社会学的な方法論を用いた調査が中心となる。本研究課題としては最終的にこれら異なるアプローチを融合、止揚していくことが総合的で複合的なコーチングという領域に対して一定の示唆を与えることに結びつくものと考えていることから、たとえば松沢哲郎教授(京都大学霊長類研究所)の行っているような方法を学び、複合的なアプローチを適切に統合していけるよう試みたい。そして、当初の研究目的が果たせるよう遂行していきたい。
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Causes of Carryover |
初年度末(2016年3月19日および20日)に車いすバドミントンプレイヤーを対象とした実験と聞き取り調査を行ったことから、それに伴う経費の支出が初年度内に完了しなかったことや、2016年10月に実施した実験の際の被験者の滞在日数が当初予定よりも短縮されたことによる支出の減少などによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
構想当初より2年度目については聞き取り調査、成果発表のための学会参加および追加実験を行う予定であり、2年度目の研究費用使用計画も大幅な変更はない。前年度より繰り越される部分については、昨年度末実施済みの実験に伴う被験者への経費の支出をするとともに、追加実験を行う際の被験者への交通費等の支出や実験実施に伴う消耗品(主にバドミントンシャトル)などに充当することで使用する。
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Research Products
(1 results)