2015 Fiscal Year Research-status Report
廃用性筋萎縮を最小限にとどめる新たな栄養学的手法の開発 -機能性脂質に着目して-
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15K01615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 新 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00460048)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 廃用性筋萎縮 / 機能性脂質 / 中鎖脂肪酸 / ラット / ユビキチンリガーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
怪我や故障などによる身体活動量の低下にともない骨格筋は萎縮する。スポーツ選手にとってこのような廃用性筋萎縮は、現場復帰の遅れやパフォーマンスの低下につながるため、最小限にとどめることが重要となる。筋萎縮を予防するための様々な方法が検討されているが、食事は毎日必ず行うことであり、その中で筋萎縮を抑制できる栄養成分を摂取することができれば、無理なく筋萎縮を予防することが可能となる。 脂質は三大栄養素の一つであるが、スポーツ選手にとっては体重増加につながる有害物質として扱われる場合が多い。しかしながら、近年の研究により、体脂肪の蓄積予防やガンの発症抑制など有用な生理活性を持つ「機能性脂質」と呼ばれる脂質が存在することが明らかとなっている。本年度の研究では、通常の食用油(長鎖脂肪酸油)よりも炭素数が少ない中鎖脂肪酸油と呼ばれる機能性脂質が、廃用性筋萎縮を抑制できるか否かについて実験動物を対象として検討を行った。 片方の脚にギプス固定を施したラットに対して、長鎖脂肪酸油もしくは中鎖脂肪酸油を配合した特殊飼料を摂取させ、廃用性筋萎縮の進行がどの程度抑制できるかを評価した。その結果、長鎖脂肪酸油を摂取したラットに比べて、中鎖脂肪酸を摂取したラットでは、ギプス固定による筋重量および筋タンパク質量の減少が一部抑制されることが明らかとなった。さらに、中鎖脂肪酸油を摂取したラットの骨格筋では、骨格筋タンパク質の分解に関与するユビキチンリガーゼの一つである、MuRF-1の発現量の増加が抑制されていた。以上の結果から、中鎖脂肪酸油の摂取はMuRF-1の発現抑制を介して廃用性筋萎縮を一部軽減できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は中鎖脂肪鎖油による筋萎縮抑制効果について検討を行い、さらにそのメカニズムの一部を解明することができた。研究は当初の計画通り順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、中鎖脂肪酸油に比べてさらに炭素数の短い短鎖脂肪酸の摂取による廃用性筋萎縮抑制効果について検討していく。実験手法は、飼料に配合する脂質の種類を変える以外はこれまでとほぼ同じ手法を用いる予定であり、研究が順調に進むものと期待している。また、中鎖脂肪酸および短鎖脂肪鎖以外にも、廃用性筋萎縮の抑制効果が得られそうな機能性脂質が見つかった場合には、その効果の検証も行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、これまでに研究を数多く行ってきた中鎖脂肪酸油の効果に関して検討を行ったため、研究が順調に進んだ。しかしながら次年度は、取り扱った経験がまだ少ない短鎖脂肪酸の効果を検討する予定であることから、研究費を本年度に使いきることなく、次年度に持ち越し、万が一の場合に備えることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(約15万円)を用いて、まずは実験条件(短鎖脂肪酸の投与量、配合量など)の予備検討を行い、その結果をもとに、2016年度使用予定の研究費を用いて本実験を開始する予定である。
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Research Products
(14 results)