2016 Fiscal Year Research-status Report
運動による海馬神経新生の促進における血中アンギオテンシンIIの役割
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15K01618
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
椋田 崇生 鳥取大学, 医学部, 講師 (60346335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 康雄 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40209169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海馬 / アンギオテンシンII / VEGF / アストロサイト / 血管透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンギオテンシンIIを血中投与したラット脳切片を作製し、免疫組織化学的にVEGFの産生に対する効果を検討した。詳細な解析の結果、とくに血管周囲に局在するアストロサイトでVEGF免疫陽性反応が認められる傾向を見つけた。 アンギオテンシンIIの産生促進効果はその1型受容体(AT1R)を介している可能性が考えられる。アストロサイトでAT1Rが発現しているか否かを調べるために免疫染色を行ったが、検討可能な染色像を得ることができなかった。ホモジェネートとした海馬サンプルを用いてウェスタンブロットを行ったところ、予測される位置(ca. 45 kDa)でバンドを得た。このことから、少なくとも海馬にはAT1Rが発現していると考えられる。 血中アンギオテンシンIIは海馬のVEGF産生や神経新生に影響を与えているので、血液脳関門を通過して直接作用している可能性が考えられる。血液脳関門の透過性変化(とくに亢進)に対するアンギオテンシンIIの効果を調べるために、従来の組織学的な手法等に加え、血管透過性亢進の指標とされるアストロサイト産生タンパク質のS100βの血中濃度の測定なども行ってきたが、いずれも検出感度が低かったり、検出限界を下回ったりしたために検討可能な結果を得ることができなかった。 これを克服するために試行錯誤を重ねたところ、血中に投与した蛍光色素を用いて血管透過性の高い領域に局在するニューロンを特異的に染め出す手法を開発した。これにより詳細な検討を進めているところであるが、アンギオテンシンII投与群では、海馬とともに大脳皮質、扁桃体、視床下部においても、血中からの蛍光色素で染められるニューロンが血管周囲見つかった。このことはアンギオテンシンIIが脳の血管透過性を高めている可能性を示唆している。さらに、自発走行運動による効果も検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海馬での成長因子の産生に対するアンギオテンシンIIの効果については当初の予定通り実験を進め、結果を得ることができた。一方で、血液脳関門の血管透過性の検討では、一般に行われている評価法では生理的状態での血管透過性のわずかな変化の検出が困難であることが判明した。そこで、昨年度はこうした変化を捉える方法の確立にかなりの時間を充てることになった。現在では方法論を確立して、血管透過性の検討は飛躍的に進んでいる。こうした取り組みに重点を置いたために、神経応答性の効果について十分な検討を行うことができていない。また、運動による効果をみるための脳のサンプリングを行っているが、すべての解析を終えていない。これらの点において若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
神経応答性に対するアンギオテンシンIIの効果等をはじめ、当初の予定よりも遅れている検討課題を速やかに完了する予定である。また、空間学習能に対するアンギオテンシンIIおよび運動の効果の検討を逐次始める。これらと並行して、これまで得ている海馬成長因子および血管透過性に関する研究成果をまとめ、本年度前半には国際誌に投稿することにしている。
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Causes of Carryover |
新たに確立した血液脳関門の血管透過性の評価法を用いることで、高解像度での解析が飛躍的に進んでいる。この方法論の確立により、来年度にかけて実施予定であった血管透過性の検討課題を前倒しで実施するに至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度実施予定であった血管透過性の検討項目を本年度から着手するために、次年度予算を前倒しして執行し、解析に必要な試薬等を準備した。これらの物品は来年度も継続して使用するものなので、これによって予定していた来年度の研究計画に変更は生じない。来年度予定している実験および論文作成等は計画どおり実施する。
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