2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01619
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
和田 正信 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (80220961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 智 宮崎大学, 教育学部, 教授 (70221588)
矢中 規之 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70346526)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋疲労 / 温熱刺激 / 筋小胞体 / ヒートショックプロテイン / スキンドファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,温熱刺激が収縮による筋疲労を軽減できるか否かを明らかにすることであり,本年度は,温熱刺激が疲労収縮後の筋小胞体 (sarcoplasmic reticulum: SR) のカルシウム (Ca2+) 制御機能に及ぼす影響を検討した.ラットを温熱処置を施すH群と,施さないC群に分け,H群には,42℃の温水にラットの下肢を20分間浸漬する温熱処置を,1日1回,計5回施した.片脚に疲労刺激を負荷し,刺激直後 (0分群: C0群およびH0群) および60分後 (60分群: C60群およびH60群) に解剖を行い,腓腹筋を摘出した.スキンドファイバーを用いた生理学的解析および全筋を用いた生化学的解析を行い,以下の結果を得た. 1) ヒートショックプロテイン70およびαBクリスタリンの量には,0分群では,疲労刺激および温熱処置による変化はみられなかった.一方,60分群では,温熱処置による増加が観察された.2) SRのCa2+取り込み速度には,0分群 (C0群およびH0群) で,疲労刺激による低下が観察された.しかしながら,60分群 (C60群およびH60群) では,疲労刺激および温熱処置による変化は認められなかった.3) SRのCa2+放出機能には,C0群,H0群およびC60群で,疲労刺激による低下が認められたが,H60群では同様の変化は観察されなかった.4) Ca2+誘因性最大張力には,全ての群において,疲労刺激および温熱処置による変化は認められなかった. 以上の結果から,温熱処置によって,疲労刺激によって低下したSRのCa2+放出機能および最大下張力の回復が促進されることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,本年度は至適温熱刺激時間について検討する予定であったが,先行研究によって,至適刺激時間が報告された.そこで,先行研究で示された刺激時間を用いて,温熱処置が筋小胞体 (SR) のCa2+調節機能に及ぼす影響を検討したところ,Ca2+放出機能の回復が促進されることが明らかとなった.これは予想していなかった成果であるとともに,今後の研究に繋がる結果である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえ,来年度は筋小胞体 (SR) の機能の変化をさらに詳細に検討するとともに,温熱処置がCa2+調節機能に関与するどのタンパク質に作用するのかを明確にする予定である.検討予定項目は,以下のようである. 1) SR Ca2+放出チャネルの開口確率,2) SRからのCa2+漏出速度,3) 筋原線維のCa2+感受性,3) ジャンクトフィリン,ジヒドロピリジン受容体,SR Ca2+放出チャネルおよびSR Ca2+-ATPaseのタンパク量.
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Causes of Carryover |
消耗品の購入に際して,割引があったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に使用する.
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