2016 Fiscal Year Research-status Report
運動による気分、認知作業効率改善および海馬神経新生促進を修飾する栄養環境の解明
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15K01624
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松本 直幸 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00252726)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中強度運動 / 単純加算 / トレイルメイキングテスト / 注意 / 動作時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、継続的に実施する運動と一過性の運動が脳や心の健康に及ぼす効果に着目し、高齢化や介護の問題に直面する社会や個人に最適な生活習慣を提言することを目的に実施する。本研究計画では、ヒトを対象とした認知機能テストの成績や、ラット海馬における神経新生と認知機能や不安傾向との関係などを指標に、継続的あるいは一過性の運動の効果を検証する。 事前に中強度運動を実施すると、ドリル式の単純加算課題では運動後に成績が向上したが、一問一答式の計算課題と視覚的記憶課題では成績の向上は認められないことをH27年度に見いだした。複数の問題が視野内にある場合にその作業量が増加したことから、運動による覚醒レベルの上昇が空間情報処理能力を向上させた可能性を議論した。そこでH28年度は、その仮説を検証するために、女子大学生16名を対象として、計算以外の空間情報を扱うトレイルメイキングテスト(TMT)を導入して(ドリル式加算、一問一答式加算およびTMT)、中強度運動(心拍数120拍/分、10分)前後のそれらの成績を比較した。ドリル式加算および一問一答式課題はこれまでと同様の結果となり、ドリル式加算課題のみで運動後に解答数が増加した。TMTでは、中強度運動後に動作時間に短縮傾向が見られた(運動前15.1秒から運動後14.2秒へ、P = 0.09)。TMTの動作時間(次の標的へペンを動かしている時間)にはペンを動かしながら次のターゲットを探索する作業も含まれており、これが短縮したことは、運動により空間への注意のかかり方が強まる、あるいは広がるといった変化が生じ、それが空間情報処理力を向上させた可能性がある。これらの結果については、今年度の学会にて報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績概要に記したとおり、ヒトを対象とした課題についてはほぼ計画通りに進行しており、成果についても学術雑誌や学会大会での公表という形で示すことができている。一方、昨年度より動物実験については当初予定から遅れている状況があったが、熊本地震による影響で施設や実験器具に損害が生じ、さらには組織サンプルが傷むなどの被害もあり、進捗状況としてはあまり芳しくないのが現状である。ヒトを対象とした実験がほぼ順調に進行していることもあり、現在そちらに軸足を置く形で研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトを対象とした一過性の運動の影響に関する研究については、空間情報処理能力を向上させるとの仮説をさらに検証するために、フランカー課題を導入し検証を進める予定である。フランカー課題は、視野内のdistractor刺激に惑わされることなく、適切な反応が要求される課題であるので、これを導入することで、中強度運動後の影響として、単に空間からの情報収集が早まるだけでなく、情報の取捨選択や意志決定といった脳内プロセスにも影響があるか否かについても検証可能となる。このヒト対象の実験を可能な限り早めに目処を付け、そこから動物実験へ注力する方向で進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初より申請していた眼球運動測定装置が購入できないかと、節約的に助成金を使用してきたこと、および熊本地震による影響で一時的ではあるが研究活動がストップしていた時期があるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
眼球運動測定装置の購入は難しいため、その他研究遂行に必要な物品等の購入に使用。
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Research Products
(10 results)