2016 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病によるマクロファージ炎症反応亢進機構と運動効果:ヘキソサミン代謝経路の役割
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15K01627
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
白土 健 杏林大学, 医学部, 助教 (60559384)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マクロファージ / 糖尿病 / 高血糖 / 炎症 / ヘキソサミン代謝経路 / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、マクロファージ(MΦ)の炎症性応答に対する高血糖の影響とヘキソサミン経路の役割を明らかにするため、MΦのタンパク質のO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)レベルおよび炎症性サイトカインの発現レベルを2型糖尿病db/dbマウスと正常db/+マウスとの間で比較検討した。その結果、1)腹腔滲出性MΦのタンパク質O-GlcNAcレベルは、db/+マウスよりもdb/dbマウスの方が有意に高いこと、2)未刺激のMΦのTNF-α mRNA発現レベルは、db/+マウスとdb/dbマウスとの間で有意な差がないこと、3)リポ多糖(LPS)刺激6時間後のMΦのTNF-α mRNA発現レベルは、db/+マウスよりもdb/dbマウスの方が有意に低いこと、4)骨髄由来MΦでも、腹腔滲出性MΦとほぼ同様の傾向があること、が明らかとなった。さらに、正常マウスの腹腔滲出性MΦのタンパク質O-GlcNAcレベルは、O-GlcNAc転移酵素OGTの阻害剤BADGPにより有意に低下する一方、LPS刺激によるTNF-α mRNA発現誘導は有意に増強された。以上の結果から、LPS刺激によるMΦの炎症性応答は高血糖により抑制され、そのメカニズムにはタンパク質のO-GlcNAcレベルの亢進が関与していると推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画を実施した結果、MΦのLPS刺激による炎症性応答は、db/+マウスよりもdb/dbマウスの明らかに減弱していることが明らかになった。2型糖尿病患者は感染症に対する抵抗力が低いことが知られている。したがって、2型糖尿病患者の易感染性には、感染刺激に対するMΦの炎症性応答能の低下が関わっている可能性が示唆される。さらに、このメカニズムにおけるタンパク質O-GlcNAc修飾の関与を示唆する結果も得られた。以上の成果から、本研究プロジェクトは「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、高血糖によるMФのタンパク質O-GlcNAcレベルの亢進と炎症性応答能低下に対する運動の改善効果を明らかにするため、db/dbマウスおよびdb/+マウスを自発性走運動群と対照群に分けて飼育した後、MФのシグナル伝達タンパク質のO-GlcNAcレベル、LPS刺激によるシグナル伝達の活性化と炎症性サイトカインの発現誘導を比較検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究計画で当初予定していた、炎症性サイトカインの遺伝子発現を調節する各転写因子のO-GlcNAcレベルの解析を行うまでに至らなかった。これらの解析は平成29年度に行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究計画の実施に必要な実験消耗品(抗体試薬)を購入するために使用する。
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