2016 Fiscal Year Research-status Report
緊急時のリスクコミュニケーションを効率化するための安全教育方法の開発
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15K01651
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
豊沢 純子 大阪教育大学, 学校危機メンタルサポートセンター, 准教授 (90510024)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クライシスコミュニケーション / 学校安全 / 110番通報 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、計画通りに、これまでの研究成果をふまえて大学生向けの教材開発を行い、学習効果の検討を行った。教材開発にあたっては、2つの点に留意した。第一に、これまでの研究では事件発生状況をイラストで表示していたが、動画(3D-CG)を製作することによって、現実場面との乖離を少なくすることを試みた。第二に、警察本部の通信指令室の110番通報の受信方法が、時代の変化とともに変化している可能性があると考え、5年ぶりにインタビュー調査を行い、現状の確認とこれまでの研究成果に基づく情報交換を行った。調査の結果、聴取する情報に優先度(絶対3要素など)があること、発生場所の確認に特に時間を要していること、現在地認知システムを用いて場所の特定が可能なことなどが明らかとなった。この結果をふまえ、聴取方法や聴取結果の採点方法を変更した。新たに作成した教材を2つの大学で使用し、教育効果の検討を行った結果、イラストと比較して、動画を使用した通報訓練は、大学生にとって非常に難しい課題であると認識されやすく、エラーも多く生じることが確認された。動画は2種類製作したが、1つは単独犯、もう1つは複数犯であり、周辺状況を含め、情報の複雑さに差があったため、純粋な訓練効果を抽出することは困難であった。来年度、情報の複雑さをそろえた動画を新たに作成し、そのうえで改めて学習効果の検討を行うことが必要である。このような事情から、来年度は他校種での教育効果を検討する予定であったが、引き続き大学において丁寧な検証を重ねることにしたい。 昨年度の研究成果については、応用心理学研究に投稿し、査読の過程を経て採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を学会や査読付き論文で発表すること、研究成果を用いて警察本部の通信指令室の警察官と情報交流を行い、その内容を実験に反映させること、新たに教材を作成すること、作成した教材を用いて学習効果を検証することは、いずれも予定通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄にも記載したが、動画を使用した実験は想像以上に難しく感じられるようであった。授業の中で110番通報の難しさを体感してもらうことは良いことであると考えるが、必要以上に難しさを感じさせてしまうことは、実際の場面での通報意図を低くする可能性があり、望ましくない。そのため、イラストを使用した実験でこれまで行ってきたような、90分の授業で完結する内容ではなく、複数回に分けて、効力感が高まるような働きかけをすることが必要なのではないかと考えている。例えば、1回目の実験では、目撃情報の偽記憶に関する学習を行い、その内容を踏まえて2回目の実験で会話に関する学習を行う方法が考えられる。または、練習課題を行った後、本課題を行う方法も可能であろう。いずれにしても、実験手続きの見直しを行ったうえで改めて学習成果の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は3D-CGの動画作成と実験の実施に多くの時間を費やした。動画は外注にて作成したが、制作会社の担当者との情報のすり合わせに多くの時間を要し、実験の開始が遅れた。また実験を行った結果、2種類の動画の複雑さに差があることが分かり、学習効果の検出が適切になされなかった。このような事情から、研究成果を学会発表するには至らず、旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな動画の制作の費用、動画呈示用媒体の追加購入(現在は6台のみ)、研究成果の発表のための旅費、動画を教材化するためのシステム開発の費用に充てる予定である。
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