Outline of Annual Research Achievements |
本研究は糖尿病、高血圧、がんなどの疾患の原因と考えられている酸化ストレスマーカーを含む複数のストレスマーカー(8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMA, Trp, Ky, 3-HK, KA)を液体クロマトグラフィータンデム質量分析 (Liquid/chromatographic-tandem mass spectrometry : LC/MS/MS)を用いて一斉に定量できる方法を開発し、ストレス状態の評価におけるこの方法の有用性について疾患モデル動物を用いて検討することを目的とする。本年度はストレスマーカーを液体クロマトグラフィータンデム質量分析法により一斉に定量する方法を確立するため、(1)LC/MS/MS により8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの検出に必要な親イオン、子イオンの質量電荷比 m/z を決定し、(2)8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの LC/MS/MS での分離条件を設定し、(3)8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの検量線を作成する計画を実施した。(1)についてはLC/MS/MS により8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの検出に必要な親イオン、子イオンの質量電荷比 m/z を決定し、それらを質量分析装置に設定した。(2)についてはカラムとしてC18 逆相カラム、イオン交換カラム、C18-イオン交換カラム、溶媒として酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、メタノール、アセトニトリルを用い、8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMA を分離、溶出する条件を LC/MS/MS で検討し、C18-イオン交換カラム(Imtakt-SS-C18)を用い、蟻酸アンモニウム-メタノールのグラジエントにより複数のストレスマーカーを一斉に測定できることがわかった。(3)については8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAのそれぞれの物質の濃度希釈系列を作成し、(2)で決定した条件で LC/MS/MSで解析し、定量限界値 (S/N=10) を決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はストレスマーカーを液体クロマトグラフィータンデム質量分析法により一斉に定量する方法を確立するため、(1)LC/MS/MS により8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの検出に必要な親イオン、子イオンの質量電荷比 m/z の決定、(2)8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの LC/MS/MS での分離条件の設定、(3)8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの検量線の作成を計画し、実行した。当初予定していた成果が得られており、これらの点からおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度でストレスマーカーをLC/MS/MSで一斉に定量する方法が確立されたので、次年度では実際にストレスマーカーが生体試料で検出できることを以下の二つの項目で検討する。(1)4-HNE, GSH, GSSGの自己酸化、分解を抑える方法を確立し、(2)8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAの血漿での抽出効率、再現性を検討する。(1)については血漿中で 4-HNE、GSHは自己酸化されること、また、GSH は GSH 分解酵素により分解することが知られている。そこで、自己酸化、分解を阻害するため、抗酸化剤ジブチリルヒドロキシトルエン、GSH 分解酵素 グルタミルトランぺプチダーゼ (GGT) 阻害剤 をそれぞれマウスおよびラット血漿に添加し、4-HNE、GSHの経時変化をそれぞれLC/MS/MS で解析し、4-HNE, GSH, GSSG が変動しないことを確認する。(2)についてはマウスおよびラットの血漿に8-OHdG, 3-NT, 4-HNE, GSH, GSSG, ADMA, SDMAを添加し、除タンパク後、LC/MS/MS でそれぞれを定量し、抽出効率、再現性(変動係数)を求め、抽出効率が80% 以上、変動係数が15% 未満であることを確認する。最後に、上記のストレスマーカーが検出されることを確認する。検出されない場合は血漿の量を増やし、ストレスマーカーを有機溶媒で抽出後、濃縮して検討する。
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