2015 Fiscal Year Research-status Report
心の健康を維持するストレス経験記述プログラムの開発研究
Project/Area Number |
15K01664
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 定 東京理科大学, 基礎工学部, 講師 (50416179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
寮生活の大学生から被験者を募集し、38名のデータを採用した。被験者を、自分自身のストレス経験を1日20分・1カ月に1回、4カ月間に4回筆記するWriting群(W群;男子11名、女子7名)と、24時間の行動予定を同様に筆記する対照群(C群;男子12名、女子8名)に分けた。 【結果】1)クロモグラニンA(CgA)濃度:W群、C群の男女学生それぞれの群間の筆記行為前、筆記行為開始4カ月後の値に、統計的有意差は認められなかった。2)POMS:W群、C群の男女学生共に、“緊張-不安”、“活気” 、“疲労”の得点に統計的有意差は認められなかった。また、 “混乱”の得点に関しては、C群の男子学生の筆記前の値は72.3 ± 6.9から筆記開始から4ヶ月後に63.7 ± 8.4へ低下しており、統計的有意差がみられた(p < 0.01)。一方、“怒り―敵意”の得点に関してW群の女子学生にのみ統計的有意差が認められ、筆記前、4ヶ月後それぞれ54.9 ± 5.1、69.1 ± 12.3であった(p < 0.05)。また、W群の男子にのみ“抑うつ-落ち込み”の得点に統計的有意差が見られ、実験前、4ヶ月後それぞれ68.5 ± 8.8、64.6 ± 9.5であった(p < 0.05)。 【まとめ】CgA濃度の変化では、W群、C群の男女学生それぞれの群において寮生活初期から半年間で精神的ストレスの減少が示されなかった。一方、気分プロフィール調査用紙のPOMSの結果では、今回の頻度で行うストレス経験の記述はストレス軽減効果があるとは言えない結果となった。 【意義、重要性】以前に報告した結果(2013、2014)から、ストレス経験の記述は今回のように1ヵ月に1回を数カ月続けるより、数日連続して短期間に実施するとストレス軽減効果が高い可能性があると示唆した。これは効果的なストレス軽減法を開発する上で重要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、寮生活の初期になじめずストレスを感じている大学生40名程度を対象に、月に1回のペースで行う自分自身のストレス経験の記述(Writing)がストレスにどのような影響を及ぼすか検討を行うことであった。 実際、ストレスが基準以上ある学生をスクリーニングし被験者を40名とした実験を行うことができた。 さらに当初目的としたストレスの生化学的指標とした唾液中のクロモグラニンA濃度とアミラーゼ活性の測定、心理学的指標としての心理調査用紙(POMS,STAY)を用いた測定のすべてを行うことができた。 そして、実験結果としてWritingを1か月1回、数カ月繰り返して行うような低頻度で行った場合によるストレス軽減効果は観察されないことを示唆することができた。 また、得られた結果は2016年3月に開催された日本養生学会で口頭発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた結果は、Writing(自分自身のストレス経験を書く)が低頻度(1日20分を1カ月に1回×4回)の場合、ストレス軽減効果が低いことが示唆した。よって28年度は短期集中(1日20分×連続5日)のWritingのストレス軽減効果を検討したいと考える。被験者のスクリーニング方法、実験手順、測定項目等はすべて平成27年度の研究と同様とする。 <被験者>寮生活をしている大学生40名、Writing群20名(自信のストレス経験を書く:1日20分×連続5日)、対照群20名(24時間の行動を書く:1日20分×連続5日)とする。 得られた結果を取りまとめ、ストレス経験の記述の寮生活者に対するストレス軽減効果を明らかにし、このストレス軽減法の頻度等を検討することで、簡便で効果的なストレス軽減手法の開発を目指す。そして、この成果は学会発表を行い、さらに学術論文として公表する。
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