2016 Fiscal Year Research-status Report
心の健康を維持するストレス経験記述プログラムの開発研究
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15K01664
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 定 東京理科大学, 基礎工学部教養(長万部), 准教授 (50416179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
寮生活の大学生から被験者を募集し、29名のデータを取得した。被験者を、自分自身のストレス経験を1日12分間(5日間連続)筆記するWriting群(W群;15名)と、24時間の行動を同様に筆記する対照群(C群;14名)にランダムにわけた。 【結果】1)ストレスの指標である唾液アミラーゼ活性と精神的ストレス指標である唾液中クロモグラニンA(CgA)濃度:W群、C群のそれぞれの群間には統計的有意差は認められなかった。2)POMS:“怒り-敵意”のC群のベースラインと筆記2ヶ月後の値には統計的有意差(p < 0.05)があり、それぞれ46.1±6.4、54.3±13.3であった。一方、W群の“怒り-敵意”の値は同様に48.3±7.5、51.9±12.2で統計的有意差は認められなかった。“緊張-不安”、 “抑うつ-落込み”、 “活気、“疲労”、“混乱”の項目の両群の得点に統計的有意差は認められなかった。 【まとめ】唾液アミラーゼ活性と唾液中クロモグラニンA(CgA)濃度変化の結果ではW群、C群のそれぞれの群間にWritingによるストレス軽減効果は観察されなかった。一方、気分プロフィール調査のPOMSの結果では、短期集中のストレス経験の記述は“怒り-敵意”の感情の上昇を軽減させる効果があることが示唆された。 【意義、重要性】以前に報告した結果(2013、2014、2016)と今回の結果から、ストレス軽減の記述を1カ月に1回を数カ月つつけるよりも数日連続して短期間に実施するとネガティブな感情の上昇を抑える、すなわちストレス軽減効果が高い可能性があること示唆した。このことは負担の少ない効果的なストレス軽減法を開発する上で重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の目標は、自分自身のストレス経験の記述(Writing)を短期集中(1日12分、5日間連続)で行うとストレス軽減効果があるかどうか検討することであった。 調査項目も当初予定していたストレスの生化学的指標として唾液中のクロモグラニンA濃度とアミラーゼ活性の測定、心理的指標として心理調査用紙(POMS、STAI)を用いた測定のすべてを行うことができた。 そして、Writingは短期集中(1日12分、5日間連続)で行うとストレス軽減効果があることを示唆することができた。これは昨年報告したWritingを低頻度長期間(1カ月1回を4カ月間)行った場合はストレス軽減効果がないことを示唆したこととあわせて考えると、一貫したデータと考えることができ研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた結果は、短期集中(1日12分、5日間連続)のWritingがストレス軽減効果を示唆するものであった。ただ、データ数が少し不足していると考えられる。よって平成29年度はこの短期集中(1日12分、5日間連続)のWritingのストレス軽減効果をはっきりさせる為、より多くの被験者をあつめ、データの収集を行いたいと考える。実験手順等は平成28年度と同様とする。 <被験者>寮生活をしている大学生40名、Writing群20名(自分のストレス経験を書く;1日12分、5日間連続)、対照群20名(24時間の行動を書く;1日12分、5日間連続)とする。 得られた結果を取りまとめ、効率的で簡便なストレス軽減手法の開発を目指す。そして、この成果は学会発表を行い、さらに学術論文として公表する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた40名の被験者が集まらず、29名となったため分析料金、謝金、消耗品等等の支出が減り、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は被験者数を確保するため、事前の説明会の開催を増やす等して、実験を進めたいと考える。また実験途中で被験者を離脱する者がいると想定し、予定人数より数名多く被験者を採用し実験を実施する予定である。 そして、実験最終年度であるので、実験結果の公表の為、学会発表、論文作成等を積極的に行い、実験結果を社会に還元するための費用として支出する予定である。
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