2016 Fiscal Year Research-status Report
半健康様相解析モデルに基づく学校保健的半健康管理システムの構築に関する縦断的研究
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15K01668
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山崎 秀夫 常葉大学, 健康プロデュース学部, 教授 (50137022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀原 三七子 桐生大学, 医療保健学部, 教授 (30432743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 半健康 / 学校保健 / 変動予測 / 健康管理 / 縦断的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はこれまで科学研究費補助金を受けて研究展開してきた成果を踏まえ、半健康の概念規定、半健康様相の多次元構造化等の基盤的要件について再吟味を図りその妥当性・信頼性を確認し、半健康状態の規定要因について検討を加えた。当初は、自覚症状、不定愁訴、生活行動、地域環境要因、身体適性、ストレス、バイタルサイン等に関する内容を含んだ調査項目を設定したが、関連予備調査の結果から身体適性、ストレス、バイタルサインにおいて半健康状態量の多寡による有意差が見出されなかった等の理由から、当該項目については独立的な調査項目から除外した。しかし、主観的総合判断という形で調査内容に含める必要性があることが指摘された。半健康状態量・構造性に関する項目及び主要規定要因として、自覚症状、不定愁訴、主観的総合判断、生活行動、地域環境要因が抽出された。コホート調査1年度目として、半健康状態量の指数化と半健康様相の構造化を図ったが、何れもこれまで蓄積された関連知見を支持するものであることが明らかになり、半健康様相の対象に依存しない状態的頑健性が確認された。コホート集団設定について、調査協力者の事情等により当初仮定していた対象規模を若干縮小せざるを得ない状況が生じたが、MDS(Multi-Dimensional Scaling)法的な立場からみて分析結果には大きな影響を及ぼさないことも確認された。当該年度の結果から、半健康様相の多次元構造は四次元空間構成を呈すること、半健康状態量は第1主成分(主成分分析)で指数化可能であること等の基盤的知見が得られた。そのことも勘案すると、来年度以降の縦断的追跡における調査の妥当性も実証されたと捉えることができる。当該年度の研究成果の一部をSociety for Epidemiologic Research(SER)等に公表し、海外の研究者と有益な議論を展開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示したように、本研究課題2年度目に計画された内容は当初の計画以上に進展していると捉えている。昨年度までの研究展開から指摘された疾病の自然史に基づく感受性期(Susceptibility)の「Phase細分化」が、生活習慣病の蔓延に象徴される如く健康状態評価における現代的意義を反映するものである。非感染性疾患の「予備軍」的段階の「入口」に相当する健康状態を半健康状態として捉えることは、現代的健康状態を評価・管理する上で極めて重要な視点となり得る。当該年度における半健康調査の研究計画上の位置づけは、コホート集団の縦断的追跡のベースラインにあたることが特徴となる。ベースラインにおける分析から、半健康状態量の指数化としての半健康指数と半健康様相の構造化としての四次元空間構成の導出が実証的に達成された。来年度以降の縦断的追跡のベースラインとして妥当な成果を得ることができた。ただし、コホート集団規模に関して若干の修正(調査協力者の事情等による規模の縮小)を余儀無くされたことは想定外であった。しかし、多変量解析的手法の適用に十分耐えられる集団規模の確保はできたことから、今後の追跡における解析結果への影響は無視できるものと解釈できる。今後、コホート調査2年度目・3年度目におけるドロップアウト率の低減が重要な課題となる。そのため、各コホート調査年度の調査時にインストラクションを徹底することや追加調査についても視野に入れて検討する必要があると考える。当該年度の研究成果の一部をSociety for Epidemiologic Research(SER)等に公表できたこと、海外の研究者と議論できたこと等も研究の順調な進展と受け止めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究展開においては、本研究課題申請時に計画した通り、本調査(追跡2年度目・3年度目)を引き続き実施することになる。平成29年度は追跡2年度目にあたり、ベースラインとの比較が主要な内容となる。そのため、調査環境の点で、調査時とベースラインとで誤差が生じないよう極力配慮する必要がある。平成30年度は追跡3年度目にあたり、基本的に、前年度・前々年度と同様の研究展開となる。この時点でも、調査環境の同一性について極力確保できるよう配慮する。ドロップアウトのフォローアップを行いながら、追跡最終年度として3ヶ年継続したコホート調査最終結果をとりまとめ研究成果を公表する。特に、3ヶ年分のコホートデータを解析した上で、半健康様相の基盤要件となる状態量評価の妥当性・信頼性について吟味する。その上で、疾病の自然史に基づく感受性期(Susceptibility)の「Phase細分化」の必要性と現代的意義について社会的に認知されるよう取組む。そのためには、ヘルスプロモーション的な視点からのアプローチが効果的であり、活発なヘルスプロモーション活動を展開している欧米諸国での成果公表が望まれる。平成31年度は3ヶ年にわたり追跡したコホート研究の結果から、半健康状態の変動関与要因、変動パターン、変動制御モデル、変動予測モデルについて検討を加える。変動関与要因の解析には多重ロジスティック回帰分析を適用し、変動パターンの導出には数量化理論第Ⅳ類・時系列解析を施す。さらに、半健康状態の変動制御モデル・変動予測モデルの同定には数量化理論第Ⅱ類・パス解析等を適用する。本研究課題の総括的研究成果として、「包括的半健康管理システム」のモデル構築を図る。そのような研究過程を経て、延いては予防医学的段階における第一次予防の定説を覆す半健康理論を提示できるよう取組む。
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Causes of Carryover |
平成28年度に執行した物品費(データ保存解析装置)が、当初予定していた価格よりも廉価に購入できたこと、研究成果を公表するため当初予定していた国際学会での発表が計画通りに展開できなかったこと、物品費で執行予定していた消耗品の一部が充足したため未執行になったこと等により次年度使用額が生じた。しかし、当該年度の研究の遂行には全く影響を及ぼしていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、データ保存解析装置の関連物品(消耗品等)予算の執行を計画的に執り行う。さらに、研究成果の公表については、国際学会での学術発表を計画的に展開できるよう旅費執行を促進させる。特に、当該年度はコホート追跡調査の中間年にあたることから、海外を含め関連研究の研究者との議論・意見交換が重要な位置を占めるためより慎重に対応していく。
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Research Products
(6 results)