2018 Fiscal Year Research-status Report
半健康様相解析モデルに基づく学校保健的半健康管理システムの構築に関する縦断的研究
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15K01668
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
山崎 秀夫 常葉大学, 健康プロデュース学部, 教授 (50137022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀原 三七子 桐生大学, 医療保健学部, 教授 (30432743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 半健康 / 学校保健 / 変動予測 / 健康管理 / 縦断的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで科学研究費補助金を受けて展開してきた研究において得られた知見を基盤に、「Screening test for assessment of health state at risk in susceptibility phase on the natural history of disease among young-adults from a light of health promotion」の演題で、The Society for Epidemiologic Research (SER) 51st Annual Meetingで学術発表を行った。SERは疫学関連学協会において世界的にも最高水準にある学会で、アメリカ合衆国のみならず世界各国から研究者が集うことから国際的な最新の健康関連情報交換が可能な場である。昨年度に引き続き、この場で学術発表を行いながら研究成果を国際的に問うた。国際的な議論が成立する背景として、半健康問題が、現今、国際的にフィールド展開されているヘルスプロモーション活動の理論的・実践的基盤に位置づけられる事情が存在する。本研究課題の中核となる理論仮説に関わる予防医学的側面から捉えた第一次予防の段階的様相の細分化について、理論的根拠の頑健性を支持する知見が得られたことで、感受性期細分化モデル構築の妥当性が担保されたものと考えられる。さらに、中国大都市部における青少年層の人口構造的特性、加速的経済発展特性、「小皇帝」的社会背景から表出する人間関係性・観念等形成特性等が、日本の近未来的様相と近似できることを確認しながら、北京市等における研究展開の環境整備に着手した。半健康様相解析について、中国青少年層を対照設定することにより、日本青少年層の半健康様相特性が一層明確化され、日本青少年型半健康様相推計モデルの同定に関する実証的根拠の提示が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題4年度目に計画された研究内容は十分達成できたと考えている。当該年度は、ベースラインを起点として昨年度まで展開してきたデータ収集の区切りにあたる年度であり、横断的データとして繰り返しの分析を施すことができた。断面的解析の結果から、半健康データの多次元尺度的安定性等について検討を加え、良好な尺度構成にあることを確認してきている。半健康様相は四次元空間構成として安定的に捉えることが可能で、第一尺度が半健康状態の量的側面を示す半健康指数(The Semihealth Index)として捉えることの妥当性が確認できた。第二尺度(心身識別要素)・第三尺度(症状傾聴要素)・第四尺度(内科行動要素)は半健康状態の質的側面を評価できる指標であり、可視的には、第二・第三・第四尺度から成る三次元空間上における第一尺度の水準(位置)により半健康様相を解析することの妥当性が強く支持された。半健康項目個々に見た場合、単項目変動の許容範囲(正規化標準偏差基準)の境界域を多少超過する項目が数個見られたものの、構成尺度(項目群)内変動量は軽微であり、半健康状態量の評価指標としては良好な水準にあると推定できた。このことを踏まえることにより、最終年度における半健康の状態量的変動の規定要因の抽出を妥当性をもって展開することが可能になった。さらに、国際的な学術発表の場でこれまでの知見を提示しながら各国研究者と多角的に議論してきた。その中で、半健康管理システムを学校に導入する場合、「学校保健」的見地からではなく「公衆衛生」的見地から検討を加えることが現実的であるという示唆を得た。最終年度に検討予定である半健康管理システム導入については、この有益な示唆を踏まえることを視野に入れ「国境のない」システムとして構築することを重視する。システム構成においてはプロシジャー単位の単純配置を優先的な検討課題として設定する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究展開は、本研究課題申請時の当初計画に従い、ベースライン調査、3ヶ年調査(縦断的調査の3年度分)のコホート分析を中核とする計画である。ベースライン調査から3ヶ年調査までのセンサードケースは許容範囲内であったことから、このバイアスは回避できるものと考える。これまで横断的調査結果として学術発表してきた知見から、半健康様相の構造的頑健性が強く支持されることを踏まえ時系列観点からの多変量分析を試みる。数量化第二類の適用により、半健康様相の段階的判別の分析、半健康状態量変動の規定要因の導出等を実施する。さらに、これまでの国際的議論の中から生じてきた半健康管理システムの性格づけを踏まえ、管理システム導入の際、「学校保健」的見地・「公衆衛生」的見地の両側面を反映できることを検討する。そのためにも、可能な限り単純化した管理システムを再構想する必要があり、システム上の各プロシジャーの構成・内容等についても精査していく。また、中国大都市部(北京市等)における半健康研究の展開を推進することにより、本研究課題の直接的標的である日本青年層との対照分析が可能になり、日本青年層の半健康特性を明確に表出させることができるものと考える。中国大都市部では国策(一人っ子政策)の結果生じた「小皇帝」と言われる青少年層の観念・行動的特性が、日本の近未来の青少年層の特性表出の様相に近似できることが指摘されることが見出されてきている。さらに、一人っ子政策の廃止によるリバウンド現象も対照分析を施すことで考察可能となってきた。そのことが、近未来の日本青少年層の意識・行動等特性を浮き彫りにし、半健康の状態量的変動に関わる規定要因の推定精度向上に寄与することが期待できる。本研究課題の最終年度として、半健康様相解析モデル同定を試み、その妥当性・信頼性の確度を高めながら半健康管理システム構成を含む総括的知見を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額に係る若干の残額が生じたが、これは半健康診断自動処理プログラム関連経費の執行時期が年度替わりに差し掛かってしまったことによる。半健康診断自動処理プログラムの作成・導入は、元々本研究課題の最終年度に計画している半健康状態量の変動規定要因の導出と変動パターン予測を実行する際のデータ収集の自動化を想定していたものである。従って、本件関連の執行時期の変動による本研究課題の実施計画遂行に及ぼす影響は全くないと受け止めている。次年度使用額の執行の見通しを踏まえ、次年度分として請求した助成金の使用計画に関して、計画通りの執行が可能であると思われる。
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