2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01694
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
藤木 理代 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 教授 (50454450)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膵嚢胞線維症 / 難治性膵疾患 / CF登録制度 / 栄養評価 / 栄養管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵嚢胞線維症(CF、cystic fibrosis)は、 cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)の遺伝子変異を原因とする劣性遺伝性疾患である。ほとんどが乳児期に発症するため、わが国では小児慢性特定疾患に登録され、難病に指定されている。CF患者の多くは、膵酵素の分泌不全により、脂質やタンパク質の消化吸収不良を呈している。また、汗への塩分損出が高く、呼吸器不全によるエネルギーの消耗も著しい。そのため、栄養管理には特別な配慮が必要であり、それは患者の予後にかかわる。欧米ではCFは多くみられる疾患で(出生約3000人に1人)、アメリカにおいてはUS cystic fibrosis foundationが、ヨーロッパにおいてはEuropean Cystic Fibrosis Societyが患者の栄養管理法についてのガイドラインを示し、インターネット上で情報を公開している。 一方、日本を含むアジア人種でCFは非常に稀な疾患で、全国疫学調査によると、0~19歳の人口のCF受療頻度は約150万人に1人である。このため症例報告が少なく、各医療機関において、CFの診断や治療に関する情報の共有が難しい状況であった。そこで、「厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班」は、平成24年度、「CF登録制度」を発足させ、全国のCF患者の主治医、相談医、協力施設が連携して、CF患者に最新の診断と治療に関する情報を提供する体制作りを開始した。研究代表者は、「CF登録制度」における研究協力者として、患者の栄養評価を担当している。 本研究では、CF患者22名(8ヵ月~39歳、男性10人、女性12人)の身長、体重、膵外分泌機能、血中アルブミン値、ヘモグロビン値、総コレステロール値、中性脂肪値について解析し、栄養状態を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班」により設立されたCF(膵嚢胞線維症)登録制度に登録されている医療施設より、CF患者22名(8ヵ月~39歳、男性10人、女性12人)の症例登録票を集めた。身長、体重、膵外分泌機能、血中アルブミン値、ヘモグロビン値、総コレステロール値、中性脂肪値について解析し、栄養状態を評価した。 18歳以上の患者9名のうち、BMI18.5未満の者は8名(89%)であった。アルブミン値はBMIと有意な正の相関(p<0.05)を示し、特にBMI16未満の者で顕著に低値であった。膵外分泌不全を有する者でも、膵消化酵素補充剤を使用している者のアルブミン値は正常であった。ヘモグロビン値においても同様の結果であった。総コレステロール値および中性脂肪値はBMIとの相関が認められなかった。 成長期(18歳未満)の患者13名では、BMIが50パーセンタイル未満の者は10名(77%)であった。BMIが10パーセンタイル未満の者において、アルブミン値およびヘモグロビン値が顕著に低値であった。 これらの結果より、CF患者における栄養障害の重症度判定には、BMIを用い、18歳以上では、BMI16未満を重度、16以上18.5未満を中等度、18.5以上22未満を軽度とした。18歳未満においては、BMI10パーセンタイル未満を重度、10以上25パーセンタイル未満を中等度、25以上50パーセンタイル未満を軽度と提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、日本におけるCF(膵嚢胞線維症)患者の栄養管理の実施状況を把握する。CF登録制度に登録されている医療施設を訪問し、CF患者の栄養管理状況を調べる。①入院患者に提供されている食事のエネルギーや各種栄養素量の設定状況を調べる。②入院、通院患者の食事摂取状況、エネルギーや各種栄養素の摂取状況を調べる。③管理栄養士による栄養教育の実施状況と内容を調査する。 2、日本におけるCF患者の担当管理栄養士によるネットワーク作りと日本のCF患者の栄養管理法の作成を行う。①US cystic fibrosis foundationやEuropean Cystic Fibrosis Societyから出されているガイドラインなどから欧米におけるCF患者の栄養管理状況を調査する。欧米におけるCF患者の栄養管理法を参考に、年齢、性別、症状別に必要栄養量を検討する。 ②国内外のCF患者の栄養管理状況を踏まえ、膵外分泌機能、胎便性イレウスの有無、汗中Cl-濃度、呼吸器症状などの症状別に、日本におけるCF患者に必要なエネルギーおよび各種栄養素量を決定する。③国内外のCF患者の栄養教育法を踏まえ、日本におけるCF患者の栄養教育法を確立する。④各施設のCF患者の担当管理栄養士とネットワークを作り、情報交換しながら確立した栄養管理法を実践し、その妥当性について意見交換を行う。
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