2016 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫応答および炎症関連性癌発症におけるGADD34の機能解析
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15K01708
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 佐知子 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (70447845)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GADD34 / マクロファージ / 炎症 / ERストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
GADD34 (Growth arrest DNA damage induced protein 34)はDNA傷害、小胞体ストレス、飢餓ストレスなど様々な細胞傷害性ストレスにより発現が誘導されるストレス応答蛋白質であり、本研究では、生体防御機構におけるGADD34の関与を明らかにすることを目的としている。本年度は、細菌感染による急性炎症におけるGADD34の機能解析を行った。GADD34遺伝子欠損(KO)マウスに細菌感染を模倣するLPSを過剰投与した結果、GADD34KOマウスでは野生型(WT)マウスに比べ血清中の炎症性サイトカインの増加、死亡率の増加が見られた。また、GADD34KOマウスではWTマウスに比べ、LPS刺激による肝臓でのeIF2aのリン酸化、ATF4、CHOPの発現誘導が亢進しており肝細胞アポトーシスの増加、また、クッパー細胞からの炎症性サイトカイン産生が増加していた。さらに、in vitroで、LPS刺激によりマクロファージ細胞株(RAW264.7)においてGADD34の発現が誘導されることが確認された。shRNAによりGADD34遺伝子発現を抑制したRAW264.7では、コントロールRAW264.7に比べLPS刺激による炎症性サイトカイン産生の増加、Nf-kB経路、IRF3経路のより強い活性化がみられた。また、免疫沈降の結果、GADD34がシグナル伝達物質のIKKbに結合することが確認された。これまでに、GADD34は脱リン酸化酵素PP1と結合し脱リン酸化に関与していることが示されており、今回の結果から、GADD34はLPS刺激によるTLRシグナル活性化において、IKKbに結合して脱リン酸化を促進しNFkbシグナル経路の活性化を抑えることで、炎症性サイトカイン産生を抑制するということが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は自然免疫応答におけるGADD34の関与について、GADD34KOマウス、および、GADD34遺伝子発現抑制細胞株を用いて、in vivo, in vitroでのLPS刺激によるTLRシグナルを介したマクロファージの活性化におけるGADD34の作用機序の解析を行った。その結果、GADD34はLPS刺激により発現が増加し、TLRシグナルのIKKbに結合して脱リン酸化を促進し炎症性サイトカイン産生を抑制するというメカニズムを明らかにし、論文発表を行い、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、GADD34KOマウスを用いて炎症関連大腸癌モデルを作成し大腸癌発症におけるGADD34の機能解析を行ったが、炎症関連大腸癌モデルではGADD34KOマウスはWTマウスに比べ有意に腫瘍形成が抑制され、大腸での炎症性サイトカイン産生も抑制されることが示された。一方で、LPS刺激による急性炎症モデルでは、GADD34はTLRシグナル経路の活性化を抑制し炎症性サイトカイン産生を抑制するという結果が得られた。これらのことから、GADD34は炎症誘導の違いにより異なる作用を示すことが示唆された。今年度は、他の炎症性疾患および発がんモデルを用いて、炎症誘導の違いによりGADD34の作用が異なるメカニズムを詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
本年度中に、GADD34KOマウスを用いてLPS刺激による急性炎症モデルにおけるGADD34の機能解析を行ったが、慢性炎症または急性炎症といった刺激の違いによりGADD34の作用機序が異なることが明らかとなった。このことから、GADD34が様々なシグナル経路に関与していることが示唆されるが、その詳細な分子メカニズムの解明は本年度中に終了せず、一部の試薬購入について次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、in vivo、in vitroにおいて、炎症刺激の違いによるGADD34の作用機序を明らかにするために、マウス維持のための餌代等の消耗品、また、炎症誘導における免疫細胞状態を調べるにあたり、FACS、サイトカイン測定、ウェスタンブロッティングのための抗体、RT-PCRなどの酵素等の購入に使用する予定である。
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