2015 Fiscal Year Research-status Report
インスリンシグナル伝達における解糖系酵素GAPDHのニトロ化修飾の役割
Project/Area Number |
15K01728
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
馬場 猛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80366450)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 2型糖尿病 / インスリン / 翻訳後修飾 / 心筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
血糖値制御システムの破綻による糖尿病の発症が、脳卒中や心臓病などの病態を誘発する主要因の一つであり、血糖値調節機構を解明することが非常に重要だと考えられる。これまで、ラットの心筋組織においては血糖値上昇時に、またラット心筋由来のH9c2細胞株においてはインスリン刺激時に、リン酸化Aktと解糖系酵素GAPDHが会合し、GAPDH自身もリン酸化を受けることを見出した。さらにH9c2細胞株においては、インスリン刺激に伴い、GAPDHはリン酸化に先んじて細胞骨格に寄与するアクチンと会合することを明らかにしてきた。 本研究では心筋組織で、インスリンシグナルにおけるGAPDHのトリプトファン残基のニトロ化修飾について検討することを目的とした。2型糖尿病ラット(OLETF)およびコントロールラット(LETO)を用いてグルコース溶液を腹腔内に投与し血糖値を変動させ、直ちにラット心筋の細胞溶解液を調製後、抗ニトロトリプトファン抗体によるウエスタンブロット法によってGAPDHのニトロ化修飾の差異を検討したところ、血糖値上昇時、LETOと比較してOLETFにおけるGAPDHのトリプトファン残基のニトロ化レベルが減少していた。これまでタンパク質中のトリプトファン残基に生じるニトロ化修飾は疾患に伴う酸化ストレス亢進下で産生されると考えられ、タンパク質機能を傷害することで病態形成に関与している可能性が示唆されていたが、今回の知見によって、トリプトファン残基のニトロ化修飾が心筋組織においてインスリンシグナル伝達に関与していることが明らかとなった。 GAPDHのリン酸化やニトロ化といった多彩な翻訳後修飾の詳しい機構の検討により高次のシグナル伝達の仕組みが明らかになることが期待され、またGAPDHのさらなる機能解明は糖尿病やそれに伴う心疾患に対する治療開発に結びつくと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新知見も得られているので、おおむね順調に進展していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ラット心筋由来のH9c2細胞株を用いて、GAPDH変異体発現解析系を構築し、ニトロ化・脱ニトロ化に関与する分子の探索を行い、タンパク質のニトロ化・脱ニトロ化機構の解明を目指す。
|
Research Products
(2 results)