2015 Fiscal Year Research-status Report
デジタルネイティブのネット上の対人関係スキルを育成するための基礎的研究
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15K01751
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
石川 真 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (60318813)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 社会的スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,デジタルネイティブと呼ばれる現代の子どもや青年が,より円滑に,ネット上の対人関係を構築するために,とりわけネットワーク上の他者との相互作用過程におけるより良い関係,望ましい関係を築くためのスキル(対人関係スキル)を育成する学習プログラム開発に向けた基礎的研究を行うことを目的とする。当該年度においては,デジタルネイティブの現状把握のための質問紙調査を実施した。ネット上でどのように他者と関わっているか,特に,他者とのトラブルの遭遇経験とトラブルへの対応の状況についてその傾向を探った。 ネット上のトラブルは,対人間で起こりうる個人情報の漏洩,誹謗中傷・炎上事態,迷惑行為や嫌がらせ行為の3つの事例を取り上げた。これらのトラブルに対し,被害者,加害者双方の立場における経験の有無や,トラブル発生時の問題解決に対する可否等について,社会的スキルやコミュニケーションスキルとの関連性を検証し,以下の傾向が明らかとなった。 被害者としての経験のある者は25%程度確認できたが,加害者の立場になった者は5%未満に過ぎなかった。また,事例によって,各比率は異なる傾向が明らかとなった。 社会的スキルは,既存の尺度に基づき高い者と低い者に分類した。その結果,社会的スキルとトラブル対処との関連性においては加害者,被害者いずれの立場においても社会的スキルの高い者は対処可能が多く見られるのに対し,低い者は対処ができない者が多く見られる傾向を示した。 コミュニケーションスキルは,主として感情表現を含む伝達力および相手のメッセージの理解力に関わる独自の尺度に基づき高い者と低い者に分類した。その結果,コミュニケーションスキルとトラブル対処の関連性においては,コミュニケーションスキルの高い者の方が低い者よりもトラブルに対処できる傾向が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査により,デジタルネイティブが,日頃,ネット上のさまざまなサービス(ソーシャルメディア)の利用する際の実態について,何らかのトラブルを認知した経験,さらにそのトラブルへの問題解決の可否の傾向を探ることができた。さらに,次年度以降の調査に向けて,各トラブルへの問題解決における必要なスキルについても質的データとして得ることができた。一方で,デジタルネイティブがネットを利用する際に必要と考えるスキルについて,グループディスカッションを通して,質的データを得た。 これらのデータを分析することにより,明らかにされた点,今後課題とすべき点が明らかになってきている。以上の取り組みにより,今後の研究計画は大幅な変更をすることなく遂行することが可能であり,当該年度の研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿って進めるが,本年度は当初予定していた実験を授業実践の形で取り組んでいく。デジタルネイティブのネット上の情報活用能力のうち,特に,情報の伝達・発信,表現力に着目し,ネット上の炎上トラブルに対する問題解決について対人関係能力との関連性について検証する。実験的な授業実践は,情報教育を専門とする大学院生に協力を得ながら,学部生を対象とした授業内で実施する。この授業を実施する上で,試行的にルーブリックの検討を併せて行う。ただし,主として情報活用能力に関わるルーブリックとし,最終年度に向けたルーブリック作成の試行に関連づけることを念頭にする。 質問紙調査では,前年度の分析結果を踏まえ,ネット上の対人関係の実態等について幅広くデータを収集する。対象はデジタルネイティブ世代である大学生とし,200名程度のデータを収集する。 その他,ネット上のトラブルに関する質的データの収集を前年度に引き続き行う。それらのデータを踏まえ,より具体的な事象におけるユーザ(デジタルネイティブ世代)の他者との関わり方について,さまざまなスキルとの関連性について検証する。 年度末においては,次年度に向けた研究計画を再検討する。また,これらの調査で得られた結果を取りまとめ,成果の発表(研究紀要等への投稿)を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究成果について,学会等での発表機会が,原稿締め切り等の関係で困難であった。したがって,当初見積もっていた旅費等の支出がなかった。謝金においても,効率的なデータ収集等により,当初よりも支出が減った。データ入力等で必要な物品等も最小限に抑制できたため,当初よりも支出が減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度においても,当初の計画と大幅な変更がないが,計画的に研究を進め,適正な支出を行う。「次年度使用額」により,当初よりも予算的に余裕があるため,実験的実践研究を行う際に,協力を要請している申請者の所属大学の大学院生に必要な物品等を揃え,謝金の支出において当初より増額する予定である。ただし,必要以上の支出がないようにする。次年度以降においても,繰越が発生する可能性がある。そうした点も踏まえつつ,計画的に使用していく。
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