2017 Fiscal Year Research-status Report
デジタルネイティブのネット上の対人関係スキルを育成するための基礎的研究
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15K01751
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
石川 真 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60318813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 乃美 白鴎大学, 教育学部, 教授 (20308224)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 対人関係 / 社会的スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,デジタルネイティブと呼ばれる現代の子どもや青年が,より円滑にネット上の対人関係を維持・構築するために,ネットワーク上の他者との相互作用過程におけるより良い関係,望ましい関係を築くためのスキル(対人関係スキル)を育成する学習プログラム開発に向けた基礎的研究を行うことを目的としている。当該年度においては,当該者の望ましいと考える行動と実際の行動の相違について検証した。さらに,ネットワーク上のコミュニケーションの中でも特に情報発信に関わる社会規範意識に着目し,対人的志向性との関連性について探った。 SNSの複数人による実際(現実)のコミュニケーション行動と望ましいと考える行動(理想のコミュニケーション行動)の相違について,社会的スキルの側面にも着目した。コミュニケーション行動に関わる尺度を因子分析し,4因子が抽出された。現実,理想のコミュニケーション行動いずれにおいても社会的スキルの高い者の方が低い者よりもより良好なコミュニケーション行動の傾向であることが示された。また,いずれの因子においても現実のコミュニケーション行動は理想のコミュニケーション行動とズレが見られた。 7つのネットワーク上の不適切な情報発信の振る舞いについて,振る舞いの主体が本人,友人,他人である際の各社会規範意識と対人的志向性の傾向を分析した。その結果,一部のケースにおいて本人,友人が情報発信の主体である場合,対人的志向性が高い者ほど社会規範意識が高い傾向を示した。さらに,対人的志向性の下位概念の因子とネットワーク上の社会規範意識の関連性について分析したところ,人間関係志向性が高い者ほど社会規範意識が高い傾向であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては,質問紙調査により,デジタルネイティブ世代の大学生のネットワーク上のコミュニケーション行動の実態や傾向について望ましい行動とのズレという観点から比較検討することで明らかにすることができた。また,特に,コミュニケーション行動のうち,情報発信の振る舞いと社会規範意識との関連性についてもその傾向を明らかとすることができ,他者との良好な対人関係を築くための傾向や要素を検討する上で有用な知見が得られた。 次年度(最終年度)においては,ネットワーク上の対人関係スキル育成のためのルーブリック作成に向けた構成要素の検討を行う予定であるが,当該年度において,そのために必要な質問紙調査を実施することができた。また,次年度に実施予定の質問紙調査を予備的に試みており,今後の研究計画は大幅な変更をすることなく遂行することが可能であり,当該年度の研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度であることから,これまでの研究成果を改めて総括すると同時に,課題を再検討した上で,研究計画に沿って進める。主として,質問紙調査の実施と実験的授業を行う。 デジタルネイティブ世代である大学生を対象とし,前年度予備的に実施した質問紙の本調査を行い,信頼性妥当性を検討する。また,デジタルネイティブ世代の大学生を対象としてオンライン上における対人関係スキル育成のための授業プログラムを実験的に検討する。この授業プログラムは,情報教育を専門とする大学院生に協力を得ながら,学部生を対象とした授業内で実施する。 年度末においては,これらの調査で得られた結果を取りまとめ,成果の発表(研究紀要等への投稿,諸学会の大会での発表)を行う。なお,社団法人日本心理学会の倫理規程(2009)の指針に従い,質問紙調査,授業実践における協力者の人権の尊重と福祉に対する十分な配慮を自覚した上で取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
理由 当該年度の当初の申請額とほぼ同額の支出である。次年度使用額は,前年度の繰越額とほぼ同額であり,スライドしている状態である。研究そのものは,当初通りに進められている。
使用計画 当初の計画と大幅な変更はなく,計画的に研究を進め,適正な支出に努める。次年度は研究分担者への配分を行う点も踏まえた上で,全般的に計画的に使用していく。
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Research Products
(5 results)