2015 Fiscal Year Research-status Report
社会性発達とオキシトシン動態の関連性に関する追跡的研究
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15K01753
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (90434894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 大輔 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命准教授 (30390701)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会行動 / 視線 / オキシトシン / 発達 / 唾液 / 脳画像 / ホルモン / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、ヒト乳幼児期および思春期における社会性発達において、社会性ホルモンが及ぼす影響について明らかにするために、乳幼児期および思春期の児童を対象に、社会的行動指標、心理指標、内分泌指標のそれぞれが互いにどのように関連し、加齢とともにそれらがどう変化してゆくかという点を明らかにする。研究①では、乳幼児を対象に研究を行い、社会的刺激に対する視線計測、母子間相互作用の測定、ホルモンおよび遺伝子多型の測定、その他環境因子の測定を行い、各指標の因果関係について明らかにする。研究②では、思春期児童を対象に、上記、行動測定、内分泌測定に加え、脳イメージングを実施し、思春期における社会性発達の内分泌-脳-行動連関について明らかにする。研究③では、発達障害児を対象に、上記指標とASD傾向や愛着形成との関連性について横断的に検討する。 当該年度において、まず研究①では、乳児を対象に視線計測による社会行動指標、内分泌指標である唾液中オキシトシン濃度と発達との関連性について検討した。その結果、唾液中OTは年齢とともに低下する傾向が確認され、また視線計測では、社会的情報に対する注視時間が年齢とともに低下する傾向が確認された。そこで、両者の関連性について検討したところ、顔刺激の目領域への注視率と唾液中オキシトシンの間に有意な関連性が認められた。次に、思春期児童および発達障害児を対象とした研究②および③では、発達障害傾向を有する児童および定型発達児童を対象に、表情推定課題従事中の脳機能計測内と内分泌指標との関連性について検討した。その結果、発達障害群では、現在の社会環境(安定・不安定)による影響が見られ、内分泌動態のパターンが異なっていた。不安定群では起床時コルチゾールの上昇が見られたのに対し、安定群では入眠前オキシトシンの上昇が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況において、まず研究①では、65名の乳児を対象に視線計測による社会行動指標、内分泌指標である唾液中オキシトシン濃度と発達との関連性について検討した。その結果、唾液中OTは年齢とともに低下する傾向が確認され、また視線計測では、社会的情報に対する注視時間が年齢とともに低下する傾向が確認された。そこで、両者の関連性について検討したところ、顔刺激の目領域への注視率と唾液中オキシトシンの間に有意な関連性が認められた。これは、オキシトシン濃度が目領域への注視をコントロールしている可能性を示唆しており、発達に伴い両者は低下するということを示唆している。 次に、思春期児童および発達障害児を対象とした研究②および③では、発達障害傾向を有する児童38名、定型発達児童26名を対象に、表情推定課題従事中の脳機能計測内と内分泌指標(コルチゾール・オキシトシン)との関連性について検討した。その結果、発達障害群では、現在の社会環境(安定・不安定)による影響が見られ、内分泌動態のパターンが異なっていた。定型群と比較して、不安定群では起床時コルチゾールの上昇が見られたのに対し、安定群では入眠前オキシトシンの上昇が観察された。この結果は、不安定群では、現在の状況下における社会的ストレスが起床時コルチゾールの状況を招いている可能性を示唆しており、また安定群では、安定した社会的相互作用が入眠時オキシトシン濃度の上昇をもたらしている可能性が示唆される。オキシトシンとコルチゾールは互いにネガティブな影響を及ぼすことが知られていることから(Cardoso,2014)、安定群では入眠時のオキシトシン濃度の上昇が翌朝の起床時のコルチゾールの上昇を抑制している可能性も示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、まず研究①では、前年度の乳児に引き続いて、幼児を対象に視線計測による社会行動指標、内分泌指標である唾液中オキシトシン濃度と発達との関連性について検討する。その後、前年度との結果を合わせ、乳幼児期全般におけるオキシトシン濃度の発達、社会的情報に対する注視時間の発達、およびそれら両者の関連性について明らかにする。さらには、オキシトシン濃度に対する遺伝的な個人差による影響を検討するために、オキシトシン受容体多型とオキシトシン濃度および視線パターンの発達との関連性についても検討する。 次に、思春期児童および発達障害児を対象とした研究②および③では、内分泌計測については解析を実施したが、脳機能計測については測定を実施はしたものの解析結果については未検討である。上記対象者について、脳機能と発達障害傾向(ASD傾向)や愛着指標との関連性について検討を加え、併せてホルモンが脳機能におよぼす影響についても考慮に入れつつ明らかにしたい。
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Research Products
(37 results)
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[Journal Article] Gazefinder as a clinical supplementary tool for discriminating between autism spectrum disorder and typical development in male adolescents and adults.2016
Author(s)
Fujioka T, Inohara K, Okamoto Y, Masuya Y, Ishitobi M, Saito DN, Jung M, Arai S, Matsumura Y, Fujisawa TX, Narita K, Suzuki K, Tsuchiya JK, Mori N, Katayama T, Sato M, Munesue T, Okazawa H, Tomoda A, Wada Y, Kosaka H.
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Journal Title
Molecular Autism
Volume: 7
Pages: 19
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Effectiveness in cognitive function of oral tipepidine administration for children with attention deficit/hyperactivity disorder: A 4-week, open-label clinical study.2015
Author(s)
Tomoda A, Takiguchi S, Fujisawa TX, Yatsuga C, Kumazaki H, Fujioka T, Suzuki H, Matsuzaki H, Kosaka H, Tanaka S.
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Journal Title
Psychiatry and Clinical Neurosciences
Volume: 69
Pages: 658-659
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ventral striatum dysfunction in children and adolescents with reactive attachment disorder: A functional MRI Study.2015
Author(s)
Takiguchi S, Fujisawa TX, Mizushima S, Saito DN, Okamoto Y, Shimada K, Koizumi M, Kumazaki H, Jung M, Kosaka H, Hiratani M, Ohshima Y, Teicher, MH, Tomoda A.
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Journal Title
British Journal of Psychiatry Open
Volume: 1
Pages: 121-128
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Low striatal activity during reward perception caused by childhood adversity.2015
Author(s)
Takiguchi S, Fujisawa TX, Mizushima S, Saito DN, Kumazaki H, Koizumi M, Shimada K, Okamoto Y, Jung M, Kosaka H, Tomoda A.
Organizer
第57回日本小児神経学会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2015-05-29
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[Presentation] Which parameters differ in the gait of children with ADHD?2015
Author(s)
Naruse H, Yatsuga C, Fujisawa TX, Kumazaki H, Takiguchi S, Mizushima S, Matsuo H, Kubota M, Shimada S, Kosaka H, Tomoda A.
Organizer
The 5th World congress on ADHD
Place of Presentation
Glasgow, UK
Year and Date
2015-05-17
Int'l Joint Research
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[Presentation] Reward sensitivity dysfunction in children and adolescents with reactive attachment disorder.2015
Author(s)
Takiguchi S, Fujisawa TX, Mizushima S, Saito DN, Okamoto Y, Shimada K, Kumazaki H, Koizumi M, Jung M, Kosaka H, Tomoda A.
Organizer
The 13th Asian and Oceania Congress of Child Neurology (2015 AOCCN)
Place of Presentation
Taipei, Taiwan
Year and Date
2015-05-15
Int'l Joint Research
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[Presentation] Can Robotic Interaction Improve Nonverbal Communication and Social Anxiety of Children with Autism Spectrum Disorders?2015
Author(s)
Kumazaki H, Yoshikawa Y, Matsumoto Y, Mizushima S, Fujisawa T.X, Kosaka H, Tomoda A, Nemoto S, Nakano M, Miyao M, Maeda T, Ishiguro H, Muramatsu M, Mimura M.
Organizer
International Meeting for Autism Research (IMFAR)
Place of Presentation
Salt Lake City, USA
Year and Date
2015-05-14
Int'l Joint Research
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