2016 Fiscal Year Research-status Report
幼児の足裏メカノレセプターを活性化する履物および運動遊びの検討
Project/Area Number |
15K01763
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
宮口 和義 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (60457893)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 足裏 / メカノレセプター / 姿勢 / 幼児 / 草履サンダル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も対象保育園を拡大し、草履サンダルの効果を検証した。土踏まず形成に加え、足圧中心位置の前方変移が認められ、導入前に比べ骨盤、腰椎のアライメントが変わり、立位姿勢の改善が認められた。ヒヤリハット数も以前に比べて減少していることを確認した。 幼児において確認してきた事象が高齢者に適用できるか検証した。高齢者では足部機能低下が転倒の原因の一つと報告されている。日常生活における草履サンダルの着用が、中高齢女性の足趾機能および足圧分布にどのような影響を及ぼすのか検証した。対象は、地域在住の健常な中高齢女性24名(平均年齢66.1±9.8歳)であった。6ヶ月間、日常生活において草履を着用してもらった。草履導入前後に足趾把持力、足趾挟力(母趾と第二趾間の随意的把持力)、静止立位時の足圧分布を測定した。結果、足趾挟力(2.6±0.8kg →3.6±1.2kg)は有意に高まった。立位時の足裏荷重点が踵からつま先方向に移行し、足圧中心位置において有意な前方への変移(約0.8cm)が認められた。土踏まず形成等に変化が認められる者も多く、草履着用による足部機能改善の可能性が示唆された。 また、少年野球選手に草履サンダルを着用させ、8週間のスプリントトレーニングを行わせた際の20m走および疾走フォームへの効果についても検証した。草履サンダル導入当初は、思うように走れず脱げてしまう児童が多かったが、次第にバランスよく走れるようになっていった。全学年を通して草履サンダル着用時の20m走タイム、及び立ち幅跳びが有意に向上した。疾走フォームに注目すると、全体的に足が後方に流れず、引きつけられるようになり、足の振り出しが速くなった。腿も高く上がるようになり、前傾姿勢も認められ、足の着地位置が身体の真下近くになる者が多くいた。草履サンダル導入は、走フォーム矯正に有効と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
草履サンダル着用による効果に関して、多くのメディア(テレビ取材、新聞etc.)に取り上げてもらった。反響が大きく、多方面から導入に関しての相談を受けた。またその効果に関する講演会(保育園、高齢者健康教室)の依頼もあり、次年度以降の対象者(被験者)の確保も問題無いといえる。加えて、すでに草履サンダルを導入してもらっている保育園の関係者も熱心で、今後の各種測定に対しても積極的に協力してくれることになっている。 足裏感覚測定装置による、足裏メカノレセプターの測定・調査については納入時期がずれ込んだため遅れたが、より精度の高い装置が完成したことで詳細な分析が可能となった。また昨年度の活動によって研究対象者が幼児のみならず児童、高齢者と広がったことで、今後は数多くのデータ収集が行える。特に、最近の児童は足型が以前に比べて細長くなっており、踵荷重の傾向が強い。これまで足裏感覚に注目した研究はほとんど見当たらないが、姿勢評価とも関連づけて検証を進めたい。開発メーカーも健常者のデータに関心も持っていることから、今後も支援が期待できる。 なお、実際の保育現場では、足裏メカノレセプターの測定が年少児ではかなり難しいことも考えられる。そこで足指力にも注目した。この足指力は立ち幅跳びに関係するが、幼児の立ち幅跳び能力の現状を1985年の同地区データと比較するとともに、生活行動との関連性について検討した。その結果、男女とも記録低下が認められ、危険回避能力の指標にもなりうることがわかった。今後は足指力(母趾と第二趾間の随意的把持力)の測定も重要と思われる。特別支援学校でも上履きとして草履サンダルを導入しており、継続してその効果を検証していくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
飛鳥電気が開発した足裏感覚測定装置(元々は糖尿病患者を発見するために開発したものであるが)を用いて、幼児から高齢者までの足裏感覚を調べる予定である。性差、年齢差、運動習慣等の影響についても検証したいと考えている。また、対象者の足圧分布および足指力も同時に測定し、関係性について検証する予定である。さらに大学生を対象に幼少期から現在にいたるまでの履物、家庭内での履物(裸足、靴下、スリッパ等)を調査し、その影響について考察を進めるつもりである。 裸足で、平均台や突起物の上を渡り歩くような足裏メカノレセプターを刺激する運動遊びも考えていかなければいけない。また、足裏形状と姿勢との関係性は高いことはよく知られているが、体幹を刺激することで姿勢が変わり、足裏感覚も改善できると考えている。現在、保育園で毎朝体幹を主に刺激する体操を実践しているが、椅子座位での体操(例えば椅子に座ったままで膝を持ち上げる、足踏みをする、体をひねる等)も今後導入する予定である。骨盤のアライメントが変化し、立位姿勢にも影響し、結果として足圧分布(足裏の重心位置)や浮き指が改善されると思われる。 最近、足部機能の低下傾向はアスリートにも見られるようになってきた。アスリートにとって足部機能の強化は障害予防だけではなくパフォーマンス向上の点からも重要といえる。どんなに上半身や下半身を鍛えても、接地する足裏がしっかりと力を地面に伝える役割を果たせなければそのパワーは半減してしまう。柔道では昔から「足の指で畳をつかむように立て」といわれているが、予備調査を行った結果、立位時に足指が地面に着いていない“浮き指”の児童がほとんどあった。今後、柔道教室に通う児童を対象に草履サンダル導入を計画し、足裏調査を進めていくつもりである。また他の少年スポーツに参加している子ども達の足裏にも注目していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
幼児用のスクールサンダルを、数回にわたって購入していたが、当初計画していた被験者数が減ったため生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に新たに被験者として協力してくれる保育園児用のスクールサンダル代に充てる予定である。
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