2016 Fiscal Year Research-status Report
多職種協働による芸術保育を主軸とした日常保育実践モデルの開発
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15K01773
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
保坂 遊 東京家政大学, 子ども学部, 准教授 (90423996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 一則 東北福祉大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10382665)
和田 明人 東北福祉大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60231023)
那須 信樹 東京家政大学, 子ども学部, 教授 (60300456)
河合 規仁 東北文教大学, 人間科学部, 准教授 (80369264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 協働 / 造形表現 / 臨床美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、臨床美術士が保育現場に常駐し、保育士との協働のもと子どもの豊かな育ちを援助するために芸術を通した保育アプローチの実践を通して、感性基盤を培う領域「表現」の質的課題や保育内容の充実を図ることを目的としている。 2年目にあたるH28年度は、協力保育園を5施設(昨年度比1園追加)とし、臨床美術士が日常的に各園に勤務し保育業務の補助を担当しつつ、感性や創造力を豊かに引き出す造形表現活動を実践している。研究者は発達に沿ったプログラム開発に携わり、実践への支援、カンファレンスによる省察を通して協働の効果的な方向性を検証している。 成果:子どもの姿からは表現活動への意欲や集中力の高まり等といった「表現」領域ともに、他領域での変容が報告されている。保育士にとっても子どもの主体性を認める臨床美術士の関わりから自らの保育方法を再確認する等の刺激となっている。研究が2年目となり、子どもの発達に沿った年間プログラムも構築されつつある。また保育士側からの提案による園行事での協働、コーナー保育の環境づくり、保護者参加交流、世代間交流活動等、表現活動を軸とした様々な保育の形が展開され始めている。更には、保育者研修の実施により保育者自身のブラッシュアップとともに、研究の意義や内容の理解が深まり、協働の体制づくりに個々の意欲や関心も高まっている。 考察:子どもとの造形活動を積み重ねていくことで、表現領域のみならず、様々な領域での変容も認められ、子どもの豊かな育ちへの意義が考えられる。また、保育士と臨床美術士が互いの専門的視点を相互理解しつつ、新たなアイデアも提案、試行され、各々の専門性を活かしながら、より良い協働の形を模索する取り組みも始まっている。これらは日常的な協働が保育の質的課題に対して有効性を持つことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象となる実践現場は、当初、パイロットモデルとして研究代表者の所属する同法人1園の協力を予定していたが、H27年度よりS法人の協力体制も得られ4園で実施することができ、同プログラムの複数園での検証が研究の妥当性検討や協働の体制構築へ大きく寄与している。H28年度はそれに加え、協力施設1園の増加により、5施設での実践検証を推進している。これらの実践データの量的蓄積により、造形活動プログラムの構築、協働活動の様々な広がり、多職種間の連携や研修の在り方など豊かな保育の展開によって、保育の質的向上への効果を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、S法人の全面的な協力体制を得ることができ、H29年度では更に2施設の現場増加を図り、計7園での実践を進めていく。また、臨床美術士が実施する造形活動と日常的保育における制作や行事等、保育士との全面的な協働体制を敷き、芸術を基盤とした造形表現プログラムの構造化、協働体制による保育の質的向上、保育士の資質向上を目的とした実践と検証を推進していく。本研究を進めていく中で、多職種による「協働」体制を築くためには、相互理解や信頼関係構築が欠かすことができず、継続的保育における子どもの日々の育ちを確認しながら、充分な時間を費やして研究の効果を測っていく必要があることが分かった。当初、3年目に計画していた汎用性の検証対象施設は地域複数園から、同法人内複数園へ変更されたが、協力園での継続的発展的な保育の展開と新規参画園の比較など、より保育の質に対する研究を深化することができると判断し、芸術表現活動が子どもの育ちに与える効果や多職種協働による保育実践アプローチのモデルの構築を図っていく。
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Causes of Carryover |
研究当初、計画していた研究者間の会議にかかる旅費について、初年度より、インターネット会議の活用により、経費の削減を図ってきた。次年度使用額が生じた理由は、このことによる累積残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究3年目にとなり、本課題のまとめの年次となる。会議、打ち合わせ等を密にする必要もあり、共同研究者間での会議開催のための費用、旅費、また学会等の成果報告費用とする。
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Research Products
(8 results)