2018 Fiscal Year Research-status Report
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15K01781
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
笠間 浩幸 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (10194713)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 砂場 / 砂 / 適切な砂 / 砂場環境 / 砂場遊び / 子ども / 保育者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保育・教育施設における砂場の環境に関する諸条件と保育指導との関係性、および乳幼児の砂遊びの展開や変化について考察を行うものである。昨年までは、砂場の最も基本的な構成要素となる「砂」に関しての調査を行い、砂場環境として最も「適切な砂」とはどのようなものかについて一定の基準を探るとともに適切性の検証を行ってきた。またこの「適切な砂」を各保育施設において適性に導入することが可能となるようなシステムづくりへの取り組みとして、いくつかの自治体や保育園・幼稚園の園長との懇談を重ね、その可能性と課題について検討を重ねている。 「砂」の適切性という課題は、乳幼児及び保育者を対象として、従前の砂との比較による検証作業を行っている。まず、乳幼児については、「適切な砂」によってどのような遊びの種類、展開の仕方、時間、頻度、子ども同士の関係性の変化等に焦点を当て、継続的な観察を行っている。また保育者にとって「適切な砂」はどのような砂場保育への意識変化をもたらしたか、指導方法や指導計画、教育課程等への砂場遊びの位置づけ等に新たな展開がみられたかどうかについて調査を行っている。 さらに、保育者の砂場保育に対する課題意識と理解をより明快なものとするために、砂場保育に関する研修プログラムの開発と実践を通した研修カリキュラムの改善を行っている。この試みは、これまでの砂場のハードに関する研究に加えて、その活用法や意義の理解といったソフト的な側面からの新たな取り組みでもある。特にこの領域においては、砂場活用の効果が幼児期に留まらず、小学校教育との連携にもつながるものであり、砂場によるアプローチカリキュラム及びスタートカリキュラム開発の可能性を広げている。本研究では、このような砂場の環境改善が引き起こす実践的変化への取り組みと、新たな保育・教育カリキュラムの構築といった理論的発展を追求するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「適切な砂」の適切性に関する検証は、福島県福島市と同県棚倉町、東京都杉並区、京都府京都市上京区と京田辺市、鳥取県米子市の幼稚園・保育所、小学校の砂場にJIS規格上の「砂」(0.075mm~2.0mm)を90%以上含む砂を配置し、子ども及び保育者・教師からその影響を探っている。いずれの調査においても「適切な砂」は、扱い方への好感度も高く、砂遊びの方法や展開のバリエーションを広げ、今後も継続して使用したいという結果が得られた。このような結果から、今年度の課題でもあった「適切な砂」の継続的な導入の方向性として、公立園であれば自治体の担当部局において、また私立園校であれば経営における長たる責任者の砂への理解と認識が重要であるということと、さらに砂搬入時における留意点についても考察することができた。 砂場保育に関する研修プログラムについては、これまで取り組んできた各種研修会の振り返りを行い、次のような点をプログラムの柱とすべきことを明らかした。①現職保育者が感じている砂場保育への疑問や悩み、保育者研修プログラムに対する期待、②砂場保育の実践に必要な具体的な砂遊びスキル、③砂場保育の効果を高める道具類と新たな使用に関する工夫、④砂場保育を実施していくうえでの長期にわたる指導計画のポイント、⑤砂場の活用に関する幼小連携の可能性。 今年度はさらに、京都府上京区において砂場の環境改善に取り組んできた保育所が連携し、地域の公園における砂場でのアウトリーチ型子育て支援活動の展開を始めた。また京田辺市でも、砂場保育及び園庭全般に関する自主的な学びの動きが始まり、研修のシリーズ化が実現している。本研究による砂場の環境改善という社会実験が、実践現場における自らの保育・教育の見直しと、新たな取り組みへの意欲を引き出していることに注目するとともに、砂場の環境改善の持続的システムが今後の課題ととらえている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究最終年度に当たることから、これまで取り組んできた次の5点について、それぞれ次のような到達を目指して研究に取り組むこととする。 第1に、保育所・幼稚園における「適切な砂」による砂場環境改善と子どもの遊びの変化、保育者の砂場保育への関わりの変化についての課題である。ここでは「適切な砂」の適切性について、子どもの遊びの実態変化、保育者の砂場保育への意識とカリキュラム構成の可能性と課題を明かにする。第2に、保育者の砂場保育の実践力を高めるための研修プログラムの改良を図る。この課題では砂場活用のスキルと砂場保育の理論的な理解の二つの側面からの研修カリキュラム案を構築したい。また、そのためにこれまで行ってきた現職の保育者・教員に対するアンケート調査の一部見直しを図る。特に砂場環境改善に向けてのより具体的かつ実践的な内容に関する問題をより明確に把握することを通して、研修内容の充実を図りたい。第3に、砂場保育における子どもたちの遊びの展開をより広げることができるような砂場道具類の活用実験を集中的に行い、準備すべき道具のモデルを示す。第4に、「適切な砂」を持続的に砂場へ導入するための方法とシステムづくりの課題について、自治体や保育所間連携組織との取り組みを通してより確実なものとして提案したい。第5に、砂場の活用を通じた幼小連携のための交流プログラムを実施し、アプローチカリキュラムとスタートカリキュラムにおける砂場活用の課題と可能性の概要を明らかにしたい。 これらの研究はいずれも密接に関連するもので同時並行的に進めるが、まずは実験的課題を年度前半に行い、後半において結果の分析と考察に取り組む。研究の場としては福島県、京都府、鳥取県における保育・教育施設及び自治体との協力のもと推進し、砂場保育が一地域に留まらない全国的な可能性を持つものとしてその到達点を探っていくこととする。
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Causes of Carryover |
地域貢献事業が連続的に生じたことにより、国内研究調査の機会が減少した為。 また、研究対象の保育施設の実験受け入れ態勢が次年度回しとなったことによって、使用額が減少した。 今年度は、国内調査及び保育施設における実験を完了させる為の予算執行を計画する。
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