2015 Fiscal Year Research-status Report
合成基質を利用した渦鞭毛藻由来環状エーテル化合物の生合成関連酵素の探索
Project/Area Number |
15K01798
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐竹 真幸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90261495)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ポリ環状エーテル / 環化酵素 / 渦鞭毛藻 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンドーエポキシド開環反応を触媒する酵素探索に必要な人工基質の化学合成を行った。エポキシド基質は、不安定で自発的環化反応が進行してしまう。この問題を克服するために、6員環エーテル構造を基質認識部位として有するイエッソトキシンモデル化合物をデザインした。D-グルコースを出発原料とし、文献既知の方法を用いて6工程によりジオールへと変換した。ベンジリデン保護と続く第1級選択的脱保護によりアルコールへと導き、得られたアルコールを酸化によりアルデヒドへと変換し、続くWittig反応によりオレフィンを合成した。得られたオレフィンをヒドロホウ素化、酸化によりアルコールへと変換した後、第2級アルコールの脱保護を行い、ジオールを合成した。第1級ヒドロキシ基の選択的保護の後、プロピオル酸エチルとのMichael付加反応を行い、エステルを得た。脱保護の後、酸化によりアルデヒドを合成した。ヨウ化サマリウムによる環化反応で環状エーテル構造を構築し、6員環エーテルへと導いた。ヒドロキシ基の保護と、続くエステルの還元によりアルデヒドへと変換した。得られたアルデヒド をWittig反応により不飽和エステルへと導き、これを還元することでアリルアルコールを得た。アリルアルコールに対し不斉エポキシ化反応を行い、分子内にエポキシドを導入した。最後にヒドロキシ基の脱保護反応を行い、酵素反応の基質となる目的のイエッソトキシンAB環エポキシドモデル化合物の合成に成功した。合成したモデル化合物の安定性を確認したところ、水中で加熱した場合では、約60%がエンド環化し、約20%がエキソ環化した。しかしながら、常温では、24時間以上安定で自発的環化反応が進行しなかった。このことから酵素反応の基質として有用であることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渦鞭毛藻が生産するポリ環状エーテル化合物の生合成解明の鍵になると考えているエンドーエポキシド開環反応を触媒する酵素探索に必要なイエッソトキシンAB環エポキシドモデル化合物の合成に成功した。環状エーテル化合物の構造は、複雑であるため推定生合成前駆体の合成は困難であるが、構造の一部であるモデル化合物をデザインすることにより基質合成に成功した。今後、このモデル化合物を基質に用いて、エンドーエポキシド開環酵素探索研究が可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ポリ環状エーテル化合物を生産する渦鞭毛藻を人工培養する。培養には、2Lカブ型フラスコを用いて行う。培養した藻体を遠心分離により海水培地と分離して収穫する。収穫した藻体は、抽出まで冷凍保存する。藻体に界面活剤を加えて中性に調製したバッファーを加える。超音波により藻体を破砕抽出する。破砕液を遠心分離して殻等を沈殿させ、上澄みを粗酵素液として得る。得られた粗酵素液に合成したイエッソトキシンエポキシド基質を加えてインキュベートする。反応液にメタノールを加えて反応停止後、メタノールで酵素反応生成物を抽出する。遠心分離によりメタノール不溶性のタンパク質を除去した後、LC-MS法により生成物を分析し、エンド環化化合物の生成を確認する。一定時間ごとに反応液を取り出して、LC-MS分析を行い、酵素の反応時間をモニタリングする。酵素反応が確認できた場合には、反応温度、pHなどの反応の最適条件を検討する。エポキシドの開環反応は、自発反応でも進行し、エーテル環化合物を生成する。自発反応と酵素反応を区別するために、粗酵素液を加熱して酵素を失活させた後、合成基質を加えてエンド型環状エーテル化合物が生成するかLC-MS分析で確認する。加熱によりエンド型環化生成物が確認されない場合、酵素の触媒によりエンド環化反応が進行したことを証明することが可能である。
|
Causes of Carryover |
ポリ環状エーテル化合物の生合成を制御していると考えられるエポキシドーエンド開環酵素抽出に用いる渦鞭毛藻の培養を行う予定であった。当初培養を開始していた渦鞭毛藻よりもポリ環状エーテル化合物の生産量がより高い渦鞭毛藻の入手に成功した。そのため、高生産種の大量培養を開始した。しかしながら、渦鞭毛藻は生育速度が遅く、さらに大量の抽出試料を得るために、培養期間を延長したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
環状エーテル化合物高生産種の培養を軌道に乗せて、エポキシドーエンド開環酵素の安定かつ大量の供給を図る。藻類の大量培養には、ビタミンなどの栄養源や微量金属などの培養試薬、培養用ガラス器具、滅菌ピペットなどを使用する。
|
Research Products
(3 results)
-
-
[Journal Article] Brevisulcatic acids from a marine microalgae implicated in a toxic vent in New Zealand2016
Author(s)
R. Irie, R. Suzuki, K. Tachibana, P. T. Holland, D. T. Harwood, F. Shi, P. McNabb, V.Beuzenberg, F. Hayashi, H. Zhang, M. Satake
-
Journal Title
Heterocycles
Volume: 92
Pages: 45-54
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-