2016 Fiscal Year Research-status Report
合成基質を利用した渦鞭毛藻由来環状エーテル化合物の生合成関連酵素の探索
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15K01798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐竹 真幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90261495)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環状エーテル / 生合成酵素 / 渦鞭毛藻 / 脱水素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋プランクトンから単離された単環性エーテル化合物ブレビサミドの推定生合成前駆体合成を行った。ブレビサミド生合成前駆体をプランクトンの酵素抽出液と混合して反応させ、目的の酵素反応を検出することで、環状エーテル化合物の生合成に関与する酵素の探索を行った。3種類のプランクトン抽出液に、推定生合成前駆体化合物を加えてインキュベートした後、メタノールで反応を停止し、溶液を遠心分離して得た上澄みをLC-ESI/MSで分析し、マススペクトルと保持時間から酵素生成物を確認した。その結果、二重結合をエポキシドに酸化する酵素やエポキシドの開環酵素は発見できなかったが、エポキシド前駆体の側鎖アルデヒド基の酸化および、ジエンヒドロキシメチル末端の脱水素反応が観測された。多くの海産環状エーテル化合物は、分子末端側鎖にエナール構造を有している。これらのアルデヒド基は生合成における脱水素化によって生じると考えられ、今回観測した脱水素化反応はこうした梯子状ポリエーテル化合物の生合成に関与している可能性が示唆された。さらに条件検討を行い、この脱水素反応は補酵素がない条件では起こらないことから、脱水素反応が酵素によって触媒されていることを確認した。これらの反応は、環状エーテル化合物を生産するプランクトン抽出物にのみ触媒されたことから、海産環状エーテル化合物の生合成に関与している酵素を発見した。脱水素反応は、基質がポリケチド合成酵素から解離した後に起こると予想され、生合成機構の最終段階を制御していることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単環性環状エーテル化合物ブレビサミドの推定生合成前駆体合成に成功し、プランクトン酵素抽出液とのインキュベーション実験により、アルデヒド酸化酵素やジエンヒドロキシメチル末端の脱水素酵素を発見した。これらの構造が海産環状エーテル化合物に特徴的な構造であり、かつ環状エーテル化合物を生産するプランクトン抽出液中にのみ見出されたことから環状エーテルの生合成に関与する可能性が高い酵素を発見した。 ポリ環状エーテル化合物イエッソトキシンのAB環モデルエポキシド化合物の合成に成功した。このモデルエポキシド化合物を用いてエンドーエポキシド開環酵素の探索が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したポリ環状エーテル化合物イエッソトキシンの推定エポキシド前駆体の部分構造を有するモデル化合物を渦鞭毛藻の抽出液と混合するインキュベーション実験を行い、ポリ環状エーテル化合物の生成を検出することによって、目的のエンドーエポキシド開環酵素の存在を証明する。反応生成物の構造は、LC-ESI/MSで分析し、マススペクトルと保持時間から酵素生成物を確認する。目的のエンドーエポキシド開環反応が観測された場合は、酵素反応の反応時間、温度などの最適条件を検討する。エンドーエポキシド開環反応が酵素的に進行していることを確認するために、酵素の加熱処理やトリプシン消化による反応の進行を追跡する。
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Causes of Carryover |
単環性エーテル化合物ブレビサミドの推定生合成前駆体の側鎖アルデヒド基をカルボキシル基へと変換する酸化酵素を発見した。この酵素の基質特異性や反応条件を検討するために、構造の異なる類縁体基質の合成が必要になった。基質合成と酵素反応・生成物の検出を行うために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
反応基質の合成終了後、酵素反応を行う。酵素反応条件を確定するために、反応器具とLC-ESI/MSに使用する溶媒に使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Brevisulcatic acids from a marine microalgae implicated in a toxic vent in New Zealand2016
Author(s)
R. Irie, R. Suzuki, K. Tachibana, P. T. Holland, D. T. Harwood, F. Shi, P. McNabb, V.Beuzenberg, F. Hayashi, H. Zhang, M. Satake
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Journal Title
Heterocycles
Volume: 92
Pages: 45-54
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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