2017 Fiscal Year Research-status Report
合成基質を利用した渦鞭毛藻由来環状エーテル化合物の生合成関連酵素の探索
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15K01798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐竹 真幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90261495)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 6員環エーテル / エポキシド開環反応 / 渦鞭毛藻 / 梯子状ポリエーテル / 酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
梯子状ポリエーテル化合物イエッソトキシンの一部であるAB環部と類似構造を有するイエッソトキシンAB環エポキシ化合物を酵素反応のモデル基質として合成した。酵素反応を行う前に、化学変換による6-エンド環化物である6員環エーテルと5-エキソ環化物である5員環エーテルの生成比を確認した。水溶液中、70℃の加熱反応により、合成したエポキシモデル基質から、5員環エーテルと6員環エーテルが1:3の比率で生成し、約30%のエポキシ化合物が未反応物として回収された。この結果、モデルエポキシド基質は、水溶液中で十分安定であり、室温では自発的な開環反応を起こさず、加熱反応により6員環エーテルが生じることが明らかとなた。 渦鞭毛藻をバッファー中で超音波抽出を行い、渦鞭毛藻酵素液を調製した。渦鞭毛藻酵素抽出液に、エポキシモデル基質を加えて、室温でインキュベーションを行った。酵素混合液に、メタノールを加えて反応を停止し、遠心分離により不溶化したタンパク質群を除去し、メタノールにより酵素反応物を抽出した。酵素反応物を液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー分析を行ったところ、反応6時間後に、6ーエンド環化物のピークが観測され始め、21時間後に、エポキシド基質が消失し、6-エンド環化物が主成分として変換されたことを確認した。加熱反応による6-エンド環化物と5-エキソ環化物の生成比と酵素抽出液中での6-エンド環化物と5-エキソ環化物生成比に大きな差が有ることから、エポキシドの6-エンド開環反応が酵素で触媒されていることが確認された。渦鞭毛藻が生産する梯子状ポリエーテル化合物が、酵素反応によりエポキシド中間体から、化学的に不利なエンド環化物へと変換されることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渦鞭毛藻が生産する梯子状ポリエーテル化合物の推定生合成前駆体である環状エポキシド構造を有するモデル反応基質の化学合成に成功した。合成したモデル基質は、水溶液中では、室温でも自発的なエポキシドの開環反応が起こらず安定であり、長時間の酵素反応の基質になりえることを確認した。加熱反応で化学的にエポキシドの開環反応が進行しエーテル環が生成することと、5員環エーテルと6員環エーテルの生成比が約1:3であることを明らかとした。さらに、渦鞭毛藻の酵素抽出液中の反応で、エポキシド6-エンド開環反応生成物である6員環エーテルが選択的に生成する事を確認し、渦鞭毛藻中のエポキシド開環酵素の存在を明らかとすることができた。梯子状ポリエーテル化合物が、エポキシド生合成中間体から酵素反応により化学的に不利なエンド型開環反応生成物である6員環エーテルを形成することを示唆する結果であり、研究目的である渦鞭毛藻中の梯子状ポリエーテル化合物の生合成酵素の存在を強く支持結果を得ており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エポキシドモデル基質のエンド開環反応が酵素による触媒反応で進行していることを確認する必要が有るため、酵素抽出物の加熱やプロテアーゼ処理による酵素消化が、酵素活性に及ぼす影響を明らかとして、エポキシドモデル基質の6-エンドエポキシド開環反応が極性溶媒中の自発反応ではなく、酵素反応で進行していることを確定する。また、エポキシドの開環反応の位置選択性には、エポキシド上の置換されたメチル基が影響することが知られている。そのため、酵素反応の基質特異性を明らかとするために、メチル基の置換していないエポキシドモデル化合物を合成し、酵素反応を行い、メチル基の置換位置に関係なく、6-エンド選択的にエポキシドの開環反応が進行することを確認する。 さらに、7員環、8員環などを生成するモデルエポキシド化合物を合成して、梯子状ポリエーテル化合物の構造に特徴的な中員環エーテルの生成も酵素が触媒して生合成されることを明らかとする。
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Causes of Carryover |
2018年10月フランス国ナント市で開催される有毒プランクトン国際学会に出席し、成果報告を行うために、次年度使用額が生じた。 梯子状ポリエーテル化合物の生合成に関与している可能性が高いエポキシド開環酵素を発見した。これまで解明されていなかった海洋プランクトンが生産する梯子状ポリエーテル化合物の生合成研究に非常な有意義な成果である。故に、2018年10月フランス国ナント市で開催される有毒プランクトン学会に出席し、国際学会において成果報告することとした。そのために、学会参加費、フランスへの渡航費、宿泊費を必要とする。 さらなる酵素の基礎的性状の解明を行うために、酵素の加熱実験やプロテアーゼ消化実験を行う。ガラス器具、溶媒などの消耗品費を使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Structures of the Largest Amphidinol Homologues from the Dinoflagellate Amphidinium carterae and Structure-Activity Relationships2017
Author(s)
M. Satake, K. Cornelio, S. Hanashima, R. Malabed, M. Murata, N. Matsumori, H. Zhang, F. Hayashi, S. Mori, J. S. Kim, C.-H. Kim, J.-S. Lee
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Journal Title
Journal of Natural Products
Volume: 80
Pages: 2883-2888
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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