2015 Fiscal Year Research-status Report
難合成糖鎖受容体を分子模倣した修飾ペプチドの活性機構解明
Project/Area Number |
15K01806
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 輝彦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (10325251)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド / インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / 糖鎖 / 感染阻害 / シアル酸 / 相互作用予測 / 難知性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然リガンドの代わりとしてタンパク質に認識されるペプチドリガンドaltered peptide ligands (ATPLs) を設計する手法を確立することを目指し、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン (HA) に対して結合するペプチドとの相互作用を解析した。 [1] 組換えHAおよびペプチドの調製:ペプチドとの相互作用の精度の高い熱力学パラメータを得るため、高病原性ウイルスであるH5型HAを大腸菌で発現させ、高純度な組換えタンパク質を得た。H5型HAは全長566残基であるが、リフォールディング作業等を考慮して糖鎖受容体部位を含む330残基程度のHA1ドメインのみとした。リガンドであるペプチドは、以前に報告した5残基から15残基の配列、およびこれらの配列にビオチン化リジンを連結したペプチドをFmoc化学によって有機合成した。すべてのペプチドは、実験に必要な数mg程度の量を95%以上の純度で得ることができ、また質量分析によって目的物であることを同定した。 [2] ペプチドとHAの相互作用解析:まず、アビジン-ビオチン複合体(ABC)法を行った。HAを96穴に固定化し、ビオチン化ペプチドを濃度依存的に相互作用させた。ペプチドのHAへの結合は酵素標識したアビジンで検出し、逆数プロットなどから解離定数Kdを算出した。ペプチドは期待通り、HAと結合することがわかった。そこで次により詳細な熱力学パラメータを測定するため、等温滴定型熱量測定(ITC)を行った。まずはすでにパラメータが報告されているレクチンと糖鎖の相互作用を測定した。期待通り、文献値とほぼ一致する結果が得られた。またペプチドとの相互作用を一例測定したところ、以前に得られているABC法によって得られたKd値と同程度の値が得られた。ITCによる測定は、今回新しく調整した組換えHAで可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組換えタンパク質であるHAの発現およびリフォールディングは予定通り行うことができた。またペプチドの合成はすでに確立しているが、相互作用実験に必要なペプチドとビオチン化ペプチドの2種類を必要な配列についてそれぞれ合成することができた。また、組換えタンパク質とペプチドの相互作用をABC法によって結合活性を確認し、ITCによる測定の予備実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えタンパク質であるHAはH5型のみであるため、H1型およびH3型についても発現ベクターから作製し、発現および調製を行う。またここで、HAの配列が異なるので発現やリフォールディング条件を検討する必要がある。ITCによるペプチドとHAとの相互作用を解析し、deltaGやdeltaH、deltaSなどの熱力学パラメータを測定することにより、計算機シミュレーションなどで必要な相互作用に関する情報の蓄積を行う。
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Research Products
(6 results)