2016 Fiscal Year Research-status Report
難合成糖鎖受容体を分子模倣した修飾ペプチドの活性機構解明
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15K01806
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松原 輝彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (10325251)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチドリガンド / インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / 糖鎖 / 感染阻害 / シアル酸 / 相互作用予測 / 高感度検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)の糖鎖受容体の代わりに認識されるペプチドリガンドの相互作用解析および感染阻害機構の解明を行っている。 高い感染阻害活性のある糖修飾ペプチドとHAの相互作用をアビジン-ビオチン複合体(ABC)法で解析したところ、HAに結合するとともに、さらにシアリルラクトサミンでこの結合が阻害されたことから、期待通り糖鎖の代わりにペプチドが認識されていることが明らかになった。しかしながら、ABC法で得られた値の逆数プロットから解離定数を算出したところ、糖修飾しないペプチドと糖修飾したペプチドで結合親和性が同じであることがわかった。糖修飾しないペプチドは感染阻害活性が低く、糖修飾によって感染阻害活性が向上する。この向上の理由は、糖修飾によって結合親和性が向上したと予想していたが、この仮説が否定された。 そこで次に、糖修飾ペプチド共存下でエンドサイトーシスを抑制させ、その後プラークアッセイを行ったところ、感染が抑制されなかった。糖修飾ペプチドはやはりウイルスの吸着を阻害するわけではないことがわかった。一方、糖修飾ペプチド共存下で感染後4時間の細胞内ウイルスゲノム量をPCRで測定したところ、感染は阻害されていた。これらの結果は、糖修飾ペプチドによる感染阻害は、ウイルス感染過程の最初の吸着過程ではなく、次段階である膜融合が関わることが初めて示唆された。 また、ペプチドとHAとの相互作用を等温滴定型熱量測定(ITC)で行い、予備なデータではあるが熱力学パラメータを得ることが出来た。またX 線結晶構造解析に用いるため、大腸菌による組換えHA発現に加え、バキュロウイルスによる発現を行うための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の相互作用データの積み重ねの結果、糖修飾ペプチドの阻害機構がウイルス吸着ではなく、膜融合であるとの新しい知見が得られた。いままで不明であった機構解明に新規な視点が加わり、解明研究を展開できる状況となった。 また、ITCによる相互作用解析のため、H1型およびH3型HAの大腸菌による組換え発現および精製を続けている。少量ではあるが得られたHAとペプチドとの相互作用をITCによる解析したところ、予備的ではあるが熱力学パラメータを測定することができた。さらに原子レベルの解析を行うため、X 線結晶構造解析のための準備を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
糖修飾ペプチドの阻害機構がウイルス吸着ではなく、膜融合であることが示唆されたことから、次に細胞実験を行い、この知見の確証を得る。 H1型およびH3型HAの大腸菌による組換え発現および精製条件を確立し、大量にタンパク質を得てITC測定によって熱力学パラメータを同定する。また得られたパラメータと計算機シミュレーションでの値を比較検討し、シミュレーション条件を精度の向上を図る。X 線結晶構造解析を行うため、タンパク質発現および精製、結晶化条件などを検討し、解析準備を進める。
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