2016 Fiscal Year Research-status Report
LC/MS/MSを用いた次世代メタボロミクス研究のための基盤技術開発
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15K01812
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
津川 裕司 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (30647235)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタボロミクス / リピドミクス / 質量分析 / LC-MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では,主に2点の技術開発を行った. 1.標準品のマススペクトルが無く,「未同定」として検出される低分子化合物に対して,構造推定を行うためのMS-FINDERソフトウェアを開発した.このプログラムではまず,構造未知のイオンのプリカーサーイオンから組成式の推定を行い,そこから考えられうる構造式候補をオンラインデータベースであるHMDB・KNApSAcKなどに検索を行う.その後,「水素再配置則によるマスフラグメンテーションの解釈法」を用いて,MS/MSスペクトルから最も妥当性が高いと考えられる化合物構造式を割り出す.本手法は現在,およそ60%の確率で正解構造を割り出すことに成功しており,上位5つの候補の中に正解構造が含まれる確率はおよそ85%という精度で構造推定が可能なプラットホームの構築に成功している.これら水素再配置則によるマスフラグメンテーションの解釈ならびにMS-FINDERソフトウェアは,Analytical Chemistry 2016, 16, 7946-7958にその成果を掲載した. 2.スフィンゴ脂質(スフィンゴミエリン・セラミド分子種)のin silico MS/MSスペクトルを構築した.これにより,以前までに構築が完了していたグリセロ脂質(中性脂質・リン脂質などの極性脂質)だけでなく,スフィンゴ脂質も同一LC-MS/MSの分析系で同定することができ,より網羅的なノンターゲットリピドミクスが可能となった.HeLa細胞・HEK 293細胞,およびマウスの皮膚・肝臓サンプルを用いたテストサンプルの結果では,ネガティブイオンモードのLC-MS/MS分析系で検出される脂質由来イオンのうち,415種のユニークな脂質構造を同定することに成功した.本研究は,Journal of Cheminformatics, 2017, 9:19にその成果を掲載した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究先である理化学研究所メタボローム研究チーム(有田誠チームリーダー)およびUC Davisオリバー・フィーン研究室との連携がスムーズに進み,質量分析の計測データが円滑に取得できたことが研究の推進に寄与したと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,理化学研究所統合メタボロミクス研究グループと共同で,植物中未知化合物の網羅的同定を目指したプログラム開発を行っている.この成果を,2016年に発表したMS-FINDERプログラムに搭載することで,より精度の高い構造推定プログラムの構築を行う.
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