2016 Fiscal Year Research-status Report
CaMキナーゼホスファターゼを分子標的とする低毒性がん転移抑制剤創製の試み
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15K01824
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 敦彦 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (90212886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根平 達夫 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60321692)
石原 康宏 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (80435073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホスファターゼ / 阻害剤 / スクリーニング / タンパク質カルボニル化 / 反応機構 / 特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
化合物ライブラリーからCaMキナーゼホスファターゼ(CaMKP)特異的阻害活性を示す化合物のスクリーニングを行い、CaMKP活性を阻害するが、その類縁のホスファターゼであるPP2Cα活性は阻害しない化合物群を同定した。これらの化合物は共通の骨格を有しており、その部分を化学修飾すると阻害活性が失われることから、この骨格が阻害に重要であることが判明した。阻害機構を調べたところ、通常の阻害剤とは異なり、酵素タンパク質の何らかの不可逆的な化学修飾を伴うものであることが分かった。種々の検討の結果、阻害剤とのインキュベーションによって酵素タンパク質のカルボニル化が生じているという予想外の事実が明らかとなった。このカルボニル化反応は興味深いことに、酵素活性を欠失した変異酵素では殆ど観察されず、触媒反応に依存的であったことから、従来知られている化学的・非特異的なものではなく、酵素反応依存的・特異的に反応が進んでいる可能性があり、CaMKP阻害剤の特異性向上に繋がる重要な手がかりとなるかもしれない。 また、研究の過程で偶然、CaMKPが神経特異的タンパク質であるニューロフィラメントL (NFL)と強く結合する現象が見いだされ、詳しく検討した結果、培養細胞内でもCaMKP-NFL複合体が形成されていることが判明した。興味深いことに、神経軸索でのニューロフィラメントネットワーク形成のモデルとして研究されてきたNFLの自己重合過程が、CaMKPとの結合により顕著に阻害されることが見いだされた。CaMKPはニューロフィラメント重合の阻害因子として働いているのかも知れない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化合物ライブラリーの大規模スクリーニングにより、CaMKPは阻害するが近縁のPP2Cαは殆ど阻害しない化合物群を見い出した。これらの阻害様式を調べたところ、通常の酵素阻害剤とは異なり、阻害剤とのインキュベーションによって酵素タンパク質がカルボニル化を受けていることが明らかとなった。しかも、このカルボニル化は酵素の触媒反応依存的であったことから、一般的に知られている化学的・非特異的なカルボニル化ではなく、酵素反応依存的・特異的なカルボニル化反応が進行していることが示唆される。予想外ではあるが、これまでに報告例のない興味深い結果であり、今後、阻害剤の特異性を向上させるに当たって、重要な手掛かりとなるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で明らかとなった阻害剤による酵素特異的なカルボニル化反応に関して、カルボニル化部位を同定して、その阻害機構を解明するとともに、乳癌細胞株をこれらの化合物で処置した時の効果についても検討していく。
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Research Products
(6 results)