2015 Fiscal Year Research-status Report
脳波・脳磁図と機能的MRIを用いた脳損傷者の安静時機能的脳活動の解明
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15K01855
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
浦上 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院第一診療部(研究所併任), 医長 (00465048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲沢 嘉一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (10419880)
桐野 衛二 順天堂大学, 医学部, 教授 (90276460)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 安静時脳活動 / 脳波脳磁場同時記録 / 機能的MRI / 脳損傷 / 精神疾患 / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的]脳損傷や精神疾患では、安静時機能的脳結合やデフォルトモードネットワーク(DMN)の機能的な異常が指摘されている。本研究では、脳損傷後の認知行動障害や精神疾患の精神症状は、安静時脳活動の機能的脳結合のネットワークの障害によるのではないかという仮説を検証する。 [研究成果]①研究代表者(浦上裕子)は、DMNと認知機能との相関や、DMNの障害が日常生活に及ぼす影響についての総説を、英文著書の1章にまとめた。脳波脳磁場同時記録を用いた実験では、音楽聴取時にDMN領域のγ周波数帯域の低下が、健常者、特に音楽家で有意に認められたが、脳損傷者では変化がなかった。脳損傷者のDMN領域のγ周波数帯域の変化のおこりにくさは、音楽による情動の起こりにくさ、注意の乏しさと関連する可能性が考えられた。健常者と認知機能障害のある脳損傷(頭部外傷)者の、脳波安静時脳活動(各領域・各周波数帯域のRMS値の平均値)を比較したところ、右の前側頭・中側頭部のα活動のみに有意差を認めた。他の周波数帯域では有意差はなかった。脳損傷による機能的な変化は、脳波ではα活動の差異としてとらえることができる可能性がある。②研究分担者(桐野衛二)は、機能的MRIを用いて青年期健常者のDMNを描出し、視覚ネットワークとの相関が強いことを示した。統合失調症患者群と健常対照群を比較して、DMN内のnode間で内側前頭前野を起点とする機能的結合が亢進している結果を得た。統合失調症では内向的な精神活動は過活動な状態であり、妄想や自閉的思考などの臨床症状の基底にある病理と一致する所見と考えられた。③研究分担者(鷲沢嘉一)は、脳波を用いた音楽鑑賞時の感情認識における有効な特微量について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究費が11月に追加採択となったために、その時点から、研究を開始した。実験を始める環境準備や分担研究者との話し合い、研究協力者との連携など、環境整備を行うことに終始した。実験の方法、解析の方法についての議論を複数回必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脳波脳磁場同時記録を用いて脳損傷者と健常者の安静時脳活動の解明を行う。脳磁場記録の解析を積極的に行い、各周波数帯域の機能的結合から、その特徴を検討する。2)脳波脳磁場同時記録を用いて、健常者・音楽家の音楽聴取時の情動と脳活動との関連を、脳損傷者の情動の起こりにくさと比較して解明する。3)精神疾患の安静時脳活動については、統合失調症以外の疾患、自閉症スペクトラム、認知症、感情障害などにも広げ、機能的MRIと脳波同時記録などを用いて検討する。臨床症状評価との関連についてもより詳細な検討を行う。4)機能的MRI ・脳波・拡散テンソル画像(Diffusion tensor imaging: DTI)の同時計測を行い,包括的に精神疾患患者や脳損傷患者の機能的脳結合に反映される認知機能障害の検討をおこなう。各測定modality間の関連についても、統合的に評価する。5)研究協力者として田中昌司氏に加わっていただき、音楽聴取時の脳内神経基盤に関する実験を進める。
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Causes of Carryover |
実験を開始する環境整備が整わなかったため、実験を実施できなかった。そのため、人件費、謝金などの支払いがない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究の謝金や実験・解析のための物品費、情報収集のための学会出張の旅費に利用する。
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