2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞の活動を反映する光散乱パターンを用いた脳梗塞イメージング法の開発
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15K01856
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
川内 聡子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター 生体情報・治療システム研究部門, 講師 (20506505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 俊一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター 生体情報・治療システム研究部門, 教授 (90502906)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 虚血性脳梗塞 / 光散乱 / 光イメージング / 梗塞周辺脱分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,虚血性脳梗塞の病態解明と治療法開発のため,動物モデルを対象に細胞小器官の活動を反映する微細な光散乱パターンを用いて,脳組織のバイアビリティーの時空間変化をin vivoで可視化することを目的とする。細胞小器官の動きの指標になると予想される光散乱パターン(レーザー光照射によるスペックルパターン)は,光散乱体(細胞小器官等)が静止していると明暗が強い像となる。このとき画像の強度分布(ヒストグラム)は広がる性質を持つと考えられるため,この広がりを数値化・マッピングすれば細胞の活動すなわちバイアビリティーを可視化できると考えた。初年度は,この強度分布の広がりを数値化・マッピングする画像処理プログラムを作成し,ラット脳梗塞モデルを対象に画像の強度分布の広がりと梗塞領域との関係につき調べた。本年度は,強度分布の広がり(以下分散値とする)の病態生理学的意味を理解するため,分散値の時空間変化と脳血流の変化,梗塞周辺脱分極の発生,梗塞領域との関係につき調べた。 ラット頭部左半球を波長780nmのレーザー光で照明し,脳組織からの後方散乱光を経頭蓋骨的にCCDで撮像した。中大脳動脈閉塞により局所脳虚血を作製し,90分間撮像を行った。虚血直後からの分散値の時空間変化を解析した結果,組織バイアビリティーの低下を示すと考えられる分散値の増大が,主として閉塞した血管の下流に見られた。この領域における血流減少率は50-90%であり,梗塞周辺脱分極は同領域の外側を伝搬する傾向を示した。梗塞周辺脱分極の伝搬には一定の血流ないしエネルギーが必要であり,梗塞周辺脱分極の通過領域の内側はバイアビリティーが低下した領域とみなすことができる。観察された分散値の増大は,脳組織バイアビリティーの低下を反映したものと推察され,次年度はさらに病理組織学的変化との関係を明らかにする計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット中大脳動脈閉塞モデルを安定して作製することができ,再現性のある結果を取得することができた。組織バイアビリティーの低下を示すと考えられる分散値の増大は,主として梗塞領域内に見られ,予想と一致した結果が得られた。一方,観察時間内(虚血後90分)において分散値の増大は必ずしも梗塞領域全体に一致するものではなく,時間差あるいは領域依存性をもって分散値が増大していくものと推察された。次年度はより長い観察期間をもって分散値の病態生理学的意味を理解することが必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きラット中大脳動脈閉塞モデルを対象に散乱光画像の取得を行い,画像の強度分布の広がり(分散値)の評価を行う。分散値の病態生理学的意味をより詳細に理解するため,より長い観察期間で分散値を評価し,分散の増大と梗塞領域との相関を明らかにするとともに,病理組織学的変化との関係についても考察を行う。当初,虚血-再灌流モデルにより分散値と組織の可逆・不可逆性の関係を調べる計画であったが,再灌流により組織障害の影響によりモデルが複雑化すると考えられたため,モデルは引き続き永久虚血とし,分散値の解釈にフォーカスして研究を進める計画である。
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Causes of Carryover |
予想より効率良く実験が進み再現性の高い結果が得られたため,少ない個体数で目的を達することができ,当初予定していた物品購入が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
結果が予想通りの部分と予想外の部分があったため,予想と異なる結果について病理組織学的検討を実施することを計画している。組織学的検討には比較的高額な試薬と組織染色の技術を持つ研究補助が必要なため,これらにかかる消耗品費と人件費に使用する計画である。
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