2016 Fiscal Year Research-status Report
脳内神経伝達物質の非侵襲ダイナミクス解析法-functional MRS-の確立
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15K01857
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
河内山 隆紀 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (90380146)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気共鳴スペクトロスコピー法 / MRS / 機能的磁気共鳴スペクトロスコピー法 / fMRS / 磁気共鳴画像 / MRI / 脳機能計測 / 非侵襲的脳活動計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非侵襲的に脳内の神経伝達物質や生化学的代謝産物を計測する方法である磁気共鳴スペクトロスコピー法(MRS)を用いてヒト脳機能を神経化学的な側面から評価するための技術開発を目指している。特にMRSを動的な神経化学的脳活動の計測に用いる機能的磁気共鳴スペクトロスコピー法(fMRS)の構築が目標である。研究期間中には、1. MRS時系列データ解析法の理論的・数学的定式化、2. ファントムやヒト被験者の実計測によるMRS時系列データのノイズ特性の解明、3. fMRS実験の最適実験計画の検討を行い、これらの検討結果を統合して4. fMRSの実用化を目指す。 平成28年度は、昨年度に引き続き、上記(1)~(3)の検討を行った。MRSデータの計測については、データ収集先のATR脳活動イメージングセンタのシーメンス社製MRI装置がアップデートのため一時休止したことにより、下半期を中心に実施し、上半期はデータ解析に従事した。まず、昨年度に計測したデータの解析結果に基づいて計測パラメータの見直しを行った。次に、最近のMRS研究の動向を踏まえ、新しい解析法の導入を行った。MRI装置の再開に合わせて、新規MRI装置で新しい計測パラメータを用いたヒト被験者でのMRS測定を行った。現在、データ解析を継続中であるが、中途経過として明らかな精度の改善が見られている。また本年度は、共同研究を実施し、本研究課題で構築した解析法の一部を認知神経科学実験で計測された実データへ適用した。その成果は海外学術論文誌にアクセプトされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画では、平成27年度に作成したMRS時系列データ解析法を用いて各種ファントムや複数被験者による実計測データを解析、その結果に基づき計測及び解析パラメータの変更や解析法のブラシュアップを行うことにしていた。また生理学研究所の7T MRI装置の稼働状態によってはその利用も視野に入れていた。 実績として、まず昨年度計測したデータは計測パラメータ(phase cycling)によるノイズ対策が十分でなく、その結果、不適当にSN比が低いことが判明した。今年度、データ収集施設におけるMRI装置のアップデートに合わせて、MRS計測シーケンスをシーメンス社版からミネソタ大学提供の研究用シーケンスに変更し、さらに上記のphase cyclingを考慮した上で再計測を試みた。その結果、データSN比や神経伝達物質量の推定精度が著しく向上した。次に、解析法として昨年度の用いたTARQUINに加えてGannetとFDI-Aを検討することにした。これらは、TARQUINにはない優れたノイズ処理機能を持つため、これらを併用することで精度の改善が期待される。まず異なる入力データ形式に対処するためにデータ形式の変換プログラムを作成し、複数の解析法による統合的な解析プロトコルを作成中である。今年度からは、本研究課題で作成した解析法をより広範な実データに適用すべく共同研究も開始し、1件のアクセプトと1件の投稿済みを得た。7T装置での計測については、まず3T装置に比べてMRSシーケンスの確立が遅れていることを考慮し、また解析法の開発という本研究の目的においては、実験遂行が容易で先行研究との比較検討が可能な3T装置での計測が適していると判断し、今年度の実験の実施は見送った。以上、データ収集及び解析とその結果に基づく計測・解析パラメータの修正が行われている点で「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実績をうけて、平成29年度も当初設定した研究目標及び計画に基づき研究を遂行する。具体的には、以下のような研究計画を予定している。 1.被験者及びファントムデータの収集を継続する、2.MRS時系列データの物理的・生理的ノイズの評価や最適実験プロトコルの検討を継続し、その結果に基づいて解析プログラムを更新する。特に、TARQUIN、Gannet、FDI-Aの連携に取り組み、さらなる精度の向上を目指す、3.解析法の評価基準としてSN比等の統計基準に加えて、同一被験者での計測結果の再現性を加える、4.学会発表や論文投稿を通じて最適な実験計画法や解析手順の提案を行う。
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Research Products
(1 results)