2015 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカにおける高卒若年滞留層のライフコースと地方定着化/再流動化モデルの構築
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15K01860
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
白石 壮一郎 弘前大学, 人文学部, 講師 (80512243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高学歴化 / 地域間移動 / 階層移動 / 就業・就学待機 / 進路バリエーション / 将来像フレーミング / 潜在的議題としての家財相続 / 社会関係資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度:4月~6月は地域間移動についての先行研究を収集して論点を整理した。8月にウガンダ共和国調査地農村部にて現地調査をおこない、以下(a)~(c)の資料を収集した。(a)調査地若年層(小学校卒業後)のセカンダリー進学・就職状況(約50名分)、(b)進学状況、セカンダリーでの勉学・寮での生活などについて進学者個人への聞き取り(抽出した数名)、(c)セカンダリー進学者の将来展望について個人への聞き取り(抽出した数名)。進学状況などの経年データを得るため、(d)調査地県内セカンダリースクール、代表的進学先である隣県のセカンダリースクールでの所属学生学籍票などの文書資料収集も試みたが、旧い資料の保存状況が芳しくなく(散逸)、また近年のものは個人情報保護の観点から閲覧が難しかった。9月帰国後、現在に至るまで収集した調査資料(a)~(c)の整理をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウガンダ共和国調査地周辺では、この20年間で私立の小学校およびセカンダリー(中学・高校)が増設されており、「教育の質」や学費の多寡をめぐって小学校・セカンダリーともに転校する生徒も多い。農村部のセカンダリー進学志望率は男女それぞれで7割を越えており、かれらのなかには大学進学志望者も少なくなく、高学歴志向は農村部でもすすんでいることが判った。かれらは、親が学費を賄えるかどうかがセカンダリー、大学への進学の可否を決める決定項だと表明する。実際には、セカンダリーに入学し、学費滞納によって休学ないし退学する者が多数いる。また、セカンダリー卒の進学・就職待機者もいる(本研究ではかれらを「若年滞留層」と呼ぶ)。地方都市での就職口が期待できない農村部若年層にとっては、結婚・進学が現実上の選択肢であるが、親にとって子どもの結婚には家財分与(男子には土地・ウシの一部の仮相続、女子には婚資)が、進学には出費(学費等)がともなう。そこには若年滞留層の若者とかれらの親とのあいだの駆け引き・交渉が生じている。 こうした状況の中で、農村部若年層は親族(オジ・オバ・イトコ)、他出したキョウダイ、外村・他地域出身の学校の友人など、自分の周囲から情報収集し、おもに家の経済的状況に左右されながら進学先などを決定していく。セカンダリーの中途(前半の中学卒業相当)で高校(セカンダリー後半)への進学から教員養成校や専門学校進学に切り替える者もいる。これらの進路バリエーションと、具体的なかれらの進路戦略と将来像の形成について、聞き取り調査によって明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上記の分析・解釈の成果を2016年度中に学会等で発表する予定である。 (2)当初の予定どおり、比較研究のために隣国ケニア共和国の農村部・地方都市部で現地調査を実施する。調査項目は、おおむね上記2016年度ウガンダ共和国調査と同様である。 (3)ウガンダ共和国都市部での短期調査を実施する。内容は、大学生に対する聞き取り調査を予定。 (4)2015年度ウガンダ共和国調査から、セカンダリー進学等についての歴史文書資料の収集が東アフリカ現地では困難だと考えられたため、歴史文書資料収集のために旧宗主国であるイギリスの文書館(The National Archives, Kew, Richmond, London)での資料収集を第3四半期に1週間~10日間ていどで予定している。
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Causes of Carryover |
当初は、ケニア共和国での現地調査渡航費として計上したものだったが、調査地のセキュリティーが低下した状況を鑑みて、2016年度に延期とした。この予算を利用して、2015年度中の英文論文の投稿にともなう英文校正費に充てる予定を立てたが、投稿先のジャーナルを再検討し、性急に投稿するより少し内容を練り直してインパクトの高いジャーナルに投稿したほうが賢明と考え、投稿のタイミングを2016年度に延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の繰り越し分は、まずウガンダ都市部での短期調査の旅費(隣国ケニア共和国現地調査と組み合わせて往復渡航費は節約する)、ロンドンの国立文書館調査のための旅費、および英文論文投稿にともなう英文校閲費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)