2017 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカにおける高卒若年滞留層のライフコースと地方定着化/再流動化モデルの構築
Project/Area Number |
15K01860
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
白石 壮一郎 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (80512243)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 社会移動 / 地域移動 / 高学歴化 / 就業・就学待機 / アスピレーション維持 / 生計戦略 / ライフコース観 / 東アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
5~7月は、2016年度の現地調査で収集したデータの整理、文化人類学会での関連研究の論点把握につとめた。8月中旬より9月中旬にかけて、ウガンダ共和国の地方小都市カプチョルワにて聞き取りによる現地調査をおこなった。また、首都カンパラの国立マケレレ大学にてセミナーに出席、調査成果の一部を報告した。 同国地方辺縁部エルゴン山域では、セカンダリ休学・卒業の農村出身の青少年らは、県庁の町カプチョルワあるいは山麓の商都ムバレに滞留して復学・進学・就職待機する。こうした滞留若年層のなかで、居場所の家賃をみずから(あるいは親が)支払うことのできる者はほとんどおらず、親族宅、学生友人宅に同居するか、キリスト教者であれば教会施設に寝泊まりする者もいた。 昨年度までのケニア・ウガンダ両国の現地調査で浮上した課題は、滞留若年層の生活生計戦略の実態と、滞留期(就職・進学待機)のたしかな見込みが持てない状況下でのアスピレーションの維持・管理であった。ケニアに比べてウガンダの調査地は人口・経済規模が小さく、インフォーマルセクターの雑業に従事し生計維持する機会は限られていること(機会は女性よりも男性が少ない)、兄弟間の事例では昨年度ケニア調査の姉妹間の事例に比べて情報交換や協同が少なく、むしろそれぞれ独自の友人関係を活用していることが分かった。例えば、姉妹間の一時的同居はみられても、兄弟間のそれはみられない。 また、地方都市においては若年層男女が30歳台まで未婚というケースは近年増加傾向にあるが、帰村した場合には周囲から逸脱者としての興味でまなざされる。農村部Uターンは「いったん退出した村のライフコースへの途中復帰」としてかれらに忌避され、地方都市暮らしを続けるよう方向づけられる。 10月以降は、これまでに現地調査で得たデータの整理につとめ、3月には成果の一部を共編著のうちの1章のかたちで公刊した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケニア調査と同様に、ウガンダ調査についてもインタビュー聞き取りのインフォマントを得て詳細な情報を得ることができた。また、かれらインフォマントの語った内容を調査データとして公刊することについても同意を得られている。 成果の一部を、共編著[SHIINO Wakana, SHIRAISHI Soichiro and MPYANGU M. Christine Eds. 2018]のうちの1章として公刊した。(「10.研究発表 平成29年度の研究成果」欄を参照)
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)上記調査のデータ分析・解釈の成果を、2018年度中に学会あるいは研究会にて発表し、和文・英文の論文として公刊する予定である。 (2)当初の予定どおり、対象国であるケニア・ウガンダ二国のデータの収集をすすめる。データは現地調査や文献・文書調査によって収集し、場合によっては、集中的な参与観察・聞き取り調査をおこなった地方都市に関しては、補足データを電子メールやSNSなどを利用して収集することも考える。 (3)必要があれば、旧宗主国等においての文書館・図書館調査も継続的におこなう。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた現地調査助手への謝金、および英文校閲費を別資金より賄ったため。なお、次年度には翌年度分として請求した助成金と合わせ、別に作成中の英語論文の校閲費などにあて、研究成果の公刊を促進する予定である。
|
Research Products
(4 results)