2017 Fiscal Year Research-status Report
アーミッシュの宗教アイデンティティの形成と消費文化の相互関係
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15K01863
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
野村 奈央 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (10709588)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物質文化 / 宗教社会学 / アメリカ研究 / アーミッシュ / 消費文化 / 民族誌 / 再洗礼派 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年8月27日から9月2日にアントワープ聖イグナチオ大学(ベルギー)で開催された若手研究者を対象とした研究会「Religion, Culture and Society: Entanglement and Confrontation(テーマ: Between Market, State and Religion: Economic Realities, Social Justice and Faith Traditions)」にて、巨大チェーン店(Wal-martやCostco等)におけるアーミッシュの消費活動と宗教アイデンティの形成の関係、およびアーミッシュの余暇についての研究を発表した。これまでの調査で収集したデータに加え、昨年度に米国ランカスターのアーミッシュ居住区で実施した余暇活動での参与観察で新たに収集したデータをもとに、アーミッシュ女性の日常生活における消費活動やアーミッシュの余暇の過ごし方を詳細に報告した。 本研究会には、アメリカ合衆国、イギリス、インド、インドネシア、オランダ、カナダ、ベルギー、チェコ等世界各地から若手研究者が参加しており、人類学、社会学、政治学、地域研究、宗教学、経済学等、多岐にわたる学術分野の研究者と意見交換を行うことができた。複数のオーディエンスから自身が専門とするアメリカ研究とは異なった視点から質問が寄せられ、今後は経済人類学を研究枠組みとして取り入れることで、新たな理論的展開の方向性を展開することが可能であるという指摘を得た。本研究会での発表に加え、オンラインの学術誌New American Notes Onlineに拙稿「Consumption in Practice: Gift-giving as Mutual Aid in Amish Direct Homes Sales」が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度も、引き続き専門家と最新の研究動向や調査対象地に関する情報交換をしながら、現地調査の準備をすすめ、インフォーマントの消費活動に同行し、民族誌学的な調査を実施した。本研究の申請時には予定していなかったが、米国ランカスター郡のアーミッシュ・コミュニティで開催された結婚式に参加をすることができ、アーミッシュ社会における最も重要な祝祭において消費活動がどのように行われるのかを調査した。一方で、前年度までの調査結果を踏まえ、アーミッシュの余暇活動傾向の観察がより効果的なケンタッキー州ピーターズバーグへ調査地を変更する予定をしていたが、インフォーマントの都合により本年度は現地調査を実施することが不可能となった。この研究は来年度の実施を目指し、現在インフォーマントとの再調査計画を調整中である。さらに、現地調査と並行して、収集したデータの分析方法について、現地の研究者であるウェストチェスター大学准教授ヤニカン・スマッカー氏(アメリカ史/物質文化研究)と意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査結果を踏まえ、フィールドワークで収集したデータの分析および資料の精査をすすめながら、来年度以降も引き続きインフォーマントの消費活動に同行し、民族誌学的な調査を実施する。また、本年度実行することができなかったアーミッシュの余暇活動傾向の観察をするためにケンタッキー州ピーターズバーグにて民族誌学的な調査を実施する予定である。 これまでのフィールドワークの経験から、アーミッシュの意識調査を実施するには、従来の社会学・人類学的な聞き取り調査のアプローチでは、インフォーマントが調査者に強い拒否感を示すことが判明している。そのため、本調査では、マイクを使用したインタビューや質問票を使用していない。代わりに有効なのが、アーミッシュの家庭に滞在し、家族と生活をともにしつつ、彼/彼女らの社会にできる限り溶け込むという参与観察である。したがって、今後も参与観察に基づいたエスノグラフィ作成を中心とした研究活動を行う。 また、現地調査と並行して、国際学術誌に投稿する論文を執筆し、研究の発信に努める
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Causes of Carryover |
当初の予定より謝金を旅費と謝金を節約することができたため
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