2017 Fiscal Year Research-status Report
東シナ海域の基層文化と人々の生活:日韓境界領域の事例より
Project/Area Number |
15K01870
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
金 明美 静岡大学, 情報学部, 准教授 (50422738)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 東シナ海域 / 基層文化 / 生活文化 / 日韓 / 境界領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の実績として、大きく以下の二点が挙げられる。 一点目は、日韓両地域で行った現地調査の実績である。日本では、まず京都(4月)で、済州島出身二世への生活史の聞き取り、祖先祭祀の儀礼のフィールドワーク等を実施した。次に対馬(2月)で、済州島出身海女とその子弟への生活史の聞き取り、対馬北部の村(かつて済州島出身者コミュニティが存在)でフィールドワーク等を行った。韓国では、朝鮮半島の西海岸(忠清北道)の格浦(4月)の水聖堂でフィールドワーク、南西部(全羅南道)の莞島・青山島(2月)で、済州島出身の元海女と現役海女(現地男性と婚姻し定住)への生活史の聞き取り、海女の漁場(船に同乗)と地域社会に関するフィールドワークを実施した。その結果、前年度に実施した朝鮮半島の南東部(慶尚南道)の蔚山市と釜山市在住の済州島出身海女への聞き取りと地域調査で得られたデータとの共通点が見い出された。すなわち、済州島海女が現地に適応していく過程には、移住先に、済州島のムラと類似した共同体を形成・維持する仕組みが少なからず見られることである。特に、①同年齢や②キンドレッド(父方・母方の親戚)の繋がりを利用した人間関係の作り方、③お堂などムラの神々を祀る場や儀礼への関心等が重要であることが見出せた。 二点目は、発表に関する実績である。まず、5月に昨年度までの本研究の成果を日本文化人類学会で発表した。次に、本研究の成果を踏まえた研究として、12月に韓国で二つの発表を行った。さらに、本研究の成果を応用した研究を6月の異文化間教育学会で発表した。また、8月に対馬で開催された写真展(須川英之『「海女の群像」済州島・対馬・壱岐~日韓交流は対馬から、新時代の日韓の虹の架け橋を目ざして』)への情報提供・協力を行ったほか、明石書店より出版予定(2018年度)の本の一章「済州島の村落の多様性」の執筆を担当し、校正を終えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度(2017年度)の研究目標は、日韓の海峡を挟んで接する日本の地域で、現地調査を行い、成果を学会等で発表するということであった。これらは研究実績に記した通り達成されたと考える。2016年度に実施できなかった韓国での調査も実施したので、日韓両国での調査となったが、日韓の事例を比較考察する本研究にとってはむしろよい結果となった。日程の関係上、日本では五島列島、韓国では突山での調査ができなかったが、対馬及び莞島・青山島でのフィールドワークから、済州島海女の移動や生活史から見えてくる対馬と五島、莞島・青島と突山との繋がりについても情報が得られた。また、文献データを吟味する視点も得られたので、本年度の目的はほぼ達せられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度(2018年度)は、以下の三点を中心に研究を推進していく予定である。 まず、本年度現地を訪れることができなかった韓国の突山、日本の五島列島でフィールドワークを行う。 次に、当初の調査予定地である済州島海女の関連地である鳥羽市でフィールドワークを行う。これ以外にも次年度予定している調査先として伊豆半島と大阪があるが、これらの地域にはすでに調査経験があり、また大阪については、それに関連した調査を本年度京都で行ったので、鳥羽市での調査を優先させる。 三つ目は、最終年度として、これまでの調査データを整理すると共に、本研究の主な調査項目(海域研究の観点からムラの共同体の形成維持を比較考察する上で重要だと考えられる項目)についてデータ的に不足のある地域について再調査或いは文献調査を行う。その上で、データを再度吟味し、生活文化の面から東シナ海域に共通する基盤の検討を試みる。
|
Causes of Carryover |
予定していたフィールドワークが日程の関係上実施できなかったためである。今年度実施できなかったフィールドワークについては、次年度(2018年度)に実施する予定である。
|
Research Products
(5 results)