2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on Paradiplomacy led by the Basque and Catalonian Autonomous Communities: Mingled Boundaries of Nationality and Territoriality
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15K01873
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
萩尾 生 東京外国語大学, 特命事項担当室, 教授 (10508419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (20347389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スペイン / 対外政策 / パラディプロマシー / バスク / カタルーニャ / ナショナリティ / テリトリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以下のようなスペイン内外の政情の変化を受けて、研究計画の変更を余儀なくされた。(1)政党の多極化と、それゆえ一定期間政権を樹立できなかったスペインの政治的空白、(2)カタルーニャ独立問題の高進、(3)EU諸国のテロリズムへの厳正なる対処。 (1)により、国家と自治州の対外政策の権限分掌を新たに規定した2014年の法律の実質的運用は、法解釈の揺らぎもあり、しばしの間滞った。また(2)により、本研究の最大の情報源であったカタルーニャ外交評議会がスペイン政府によって突如閉鎖され、文字資料へのアクセスが不可能となった。さらに(3)によって、ことにバスク自治州政府関連の在外機関(パリ、ブリュッセル)への接触が困難となった。 かように変転する状況に鑑みて、最終年度には、現状把握を主たる目的として、カタルーニャに関しては、仏領カタルーニャ地方においてカタルーニャ主義者に対する聴き取りを、バスクに関しては、バスク自治州に加えて、バスク・ナショナリストが初めて政権を掌握したナバーラ自治州の対外政策関係者への聴き取りを継続した。 これらの調査からは、対外政策の「ウチ/ソト」の境界区分において、バスクとカタルーニャでは、領域性に関して後者の方が相対的に強固な参照枠組を有し、民族性に関しては前者の方が在外同胞との関係性が高く、その顕示度が相対的に高いことが示唆された。また、中央政府の意向にもかかわらず、ことに経済・文化の領域において自治州主導の対外活動が発展的に展開していることがわかった。 所期の目的を十分に達成したとは言い難いが、2017年11月に愛知県立大学の公開講座「地域から国民国家を再考する」において、研究代表者と研究分担者が本研究から得られた知見の一部を社会に還元する機会を得た。講座の内容は、その後の状況変化を補完しつつ、2018年度中に国内出版社から刊行されることが決定した。
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