2015 Fiscal Year Research-status Report
脆弱国家ハイチをめぐる複合的な安全保障問題―震災復興と国家再建の道筋―
Project/Area Number |
15K01889
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
浦部 浩之 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (30306477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハイチ / ドミニカ共和国 / 移民 / 国境 / 2010年ハイチ大地震 / 震災復興 / 破綻国家 / 地域安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は2010年ハイチ大地震以降の同国における震災復興の進捗状況や政治・経済・社会の現況を把握すること、および平成28年度以降に予定している現地調査を円滑に実施するために必要な予備調査・準備作業を行うことを主たる目標として研究活動を進めた。 その具体的方法は次のとおりである。まず現地調査に関しては、5月にドミニカ共和国の首都サントドミンゴ、およびハイチ・ドミニカ共和国南部国境地帯を、3月にハイチの首都ポルトープランス、および米国マイアミのリトル・ハイチ地区を訪問し、現地の研究機関や援助団体、日本大使館などからの聞き取り調査、および今後の現地調査のために必要となってくる情報の収集などを行った。また、LASA (Latin American Studies Association)年次大会(5月:プエルトリコ)、HSR (Haitian Studies Association)年次大会(10月:カナダ・モントリオール)、CLACSO (Consejo Latinoamericano de Ciencias Sociales)学術会議(11月:コロンビア・メデジン)に出席し、ハイチに関連する学術研究の全般的かつ最新の動向を把握するとともに、米国やラテンアメリカ諸国のハイチ研究者と交流・意見交換を行った。 以上の一連の活動を通じ、ドミニカ共和国における2014年移民新法が引き金となってハイチ移民や国境管理の問題が二国間関係のみならず地域国際関係の課題として争点化していること、ハイチ大統領選挙の遅延が政治・経済の安定性を損ねていることなどを具体的に把握し、これらを含め今後重点的に研究すべき課題について論点整理をすることができた。また、平成28年度に行う現地調査(ハイチ国内の地方部における調査)の下準備も進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、おおむね応募時の研究計画書や平成27年度交付申請書に記載していたとおりに研究を実施することができた。ハイチ本国における調査の日数を当初予定より若干短くせざるを得なかったことが僅かな問題としてはあったが、他方で3つの国際学会に出席し、ハイチに関する学術研究の動向を幅広い視点で把握するとともに、本研究課題の目標を達成するために今後重点的に研究していくべきイシュー(とくにハイチ・ドミニカ共和国関係や2015~16年ハイチ選挙過程など)を明確化できたことには予期していた以上の成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は前年度の成果をふまえ、応募時の研究計画にも記していたとおり、ハイチの地方部において農業・食糧・環境問題に関する現地調査を実施する。また、平成27年度の調査において研究の重要性が明らかになったハイチとドミニカ共和国の国境管理の問題やハイチ移民の問題についての調査も合わせて実施する。これらの研究を通じて、ハイチの複合的な安全保障問題の全体像への考察を深め、中間的な研究成果の一部は論文および学会などでの口頭報告のかたちで発表していく。
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Causes of Carryover |
年度末に実施した現地調査に関わる経費の一部についての執行が、事務処理上、年度内に完結させることが不可能であったため、平成27年度交付額の残金を平成28年度に繰り越したうえで、当該調査の経費全体の支払い手続きについては平成28年度内に一括して行うこととした。これが次年度使用額の生じた主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおりの理由で生じた次年度使用額の支払い手続きは、平成28年度の早い段階で適正に行われる予定である。
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