2018 Fiscal Year Research-status Report
「1945年前後」「1949年前後」の台湾映画統制に関する基礎研究
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15K01893
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
三澤 真美恵 日本大学, 文理学部, 教授 (90386706)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 台湾 / 映画統制 / 国民統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
隣接領域の研究者を招聘し、以下3回のワークショップを実施した。 ①2018年9月1日(土)「変容する現代中国と映画の実践」場所:日大文理学部、報告者と報告題目:阿部範之(同志社大学)「中華人民共和国の映画産業と政治的画期―社会主義化、改革開放、WTO加盟」、佐藤賢(明海大学)「中国独立ドキュメンタリーの歴史と現在ー80年代、90年代、ゼロ年代以降」 ②2018年10月28日(日)「映像における「過去」表象--A.バザンとA.クルーゲ」、場所:日大文理学部、報告者と報告題目:竹峰義和(東京大学)「廃墟としての過去――アレクサンダー・クルーゲの映像作品における歴史表象」、大久保清朗(山形大学)「死を復元するということ――アンドレ・バザンにおけるドキュメンタリー映画論について」 ③2018年11月11日(日)「日台関係の連続と不連続(1940~1970年代)」場所:日大文理学部、報告者と報告題目:林果顕(台湾・政治大学)「戦後台湾における日本出版物の輸入政策及び日本との交渉(1945-1972)」、菅野敦志(名桜大学)「1940年と1964年の〈東京オリンピック〉と台湾人選手」 以上により、本研究課題を推進する上で具体的な資料情報および方法論上の示唆を得た。さらに、「戒厳令解除」前後の連続と不連続についても研究の射程を伸ばすことで、「1945年/1949年」前後の特徴を捉えることができるのではないか、という着想から、移行期の変化が最もよく反映されたと思われるドキュメンタリー映画の監督3名に試験的にインタビューを実施し、雑誌上で成果を公開した。また、「1945年/1949年」前後に関する論文2編が英語論文集の2つの章という形式で刊行され、戒厳時期映画統制の典型事例たる国歌フィルムに関する論文の中国語版がウェブジャーナルに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
病気療養から復帰することはできたが、長距離出張や長時間調査には不便があるため、当初予定していたマルチ・アーカイブ方式による実証的な手法は使いにくい状況にある。他方、昨年度予定していながら実施できなかった隣接領域の研究者を招聘してのワークショップは、計3回(招聘した研究者は計6人、うち海外からの招聘者1人)実施することで、新たな研究成果や方法論から多くを学ぶことができた。そこで得た知見をもとに、必ずしもアーカイブに依らないデータの活用、インタビューやコンテンツの内容分析、人物研究といった方法で、別の角度から本研究課題にアプローチできるのではないかという手がかりを得た。昨年度の病気療養による遅れは完全に取り戻せたとは言い難いが、新たな視角や方法論上の示唆を得たことにより、研究課題を一定前に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビューや内容分析、人物研究など新たな手法を取り入れることで、本研究課題に別の角度からアプローチすることを試みたい。すなわち、「1945年/1949年」、「中国大陸/台湾」を時間的空間的に跨いだ映画人や映画作品に着目する。具体的には、台湾台中出身で重慶で抗日映画監督としてデビューし1949年以後も大陸にとどまったが、後に国民党や台湾、日本とのつながりを問題視され反革命の罪で逮捕弾圧された何非光(1913-1997年)、中国厦門出身で1949年以後国民党による映画機関の接収責任者として来台したが、後に共産党スパイとして逮捕処刑された白克(1914-1964年)の事例に着目する。両者は「1945年/1949年」「中国大陸/台湾」を交差する形で鏡像のような関係をもっており、異なる時空間における映画統制の連続と不連続を統制の対象となる映画人の側から考察する上で有意な事例であると思われる。同様に、統制の対象となる映画作品に関しては、抗戦勝利後中国における最大のヒット作『一江春水向東流』の 中国大陸版(1947年、蔡楚生・鄭君里監督)とその数年後に製作された台湾版(1965年、張英監督)に着目する。両作品もまた「1945年/1949年」「中国大陸/台湾」を交差する鏡像のような関係にある。以上のような人物研究や内容分析というアプローチをとることで、これまで主としてアーカイブ資料を使用してきた本研究課題において、公文書では光の当たりにくい映画統制の連続と不連続について新たに考察が可能になるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
図書購入時に端数が生じたため、次年度の図書購入費用に加えて使用する。
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Remarks |
湯湘竹監督インタビュー「最良の部分は永遠にレンズの外側にある 」『中国語中国文化』第16号(2019年3月25日)128-145頁。 楊家雲監督インタビュー「アマが生きた真実の記録を残す」『中国語中国文化』第16号(2019年3月25日)146-162頁 呉秀菁監督インタビュー「他者の生命をテクストにする責任」『中国語中国文化』第16号(2019年3月25日)163-181頁
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[Book] 動態影像的足跡--早期臺灣與東亞電影史2019
Author(s)
李道明主編, 三澤真美惠, 羅[上下], 葉月瑜, 史惟, 賴品蓉, 王萬睿, Aaron Gerow, 裴卿允, 孫日伊, 四方田犬彦, 李英載, 劉文兵, 陳[火韋]智, 康[女へんに捷の左側], 張泉
Total Pages
576
Publisher
台北芸術大学、遠流出版
ISBN
978-986-05-7762-4