2016 Fiscal Year Research-status Report
ラテンアメリカにおける家事労働者のジェンダーと再生産労働の分業化
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15K01897
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松久 玲子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (40239075)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家事労働者組合 / ニカラグア移民 / 家事労働者条約 / ニカラグア女性 / 中米移民労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
ILO の資料の地域・国別報告書(Domestic Workers Across the World: Global and Regional Statistics and the Extent of Legal Protection の国別報告2010 年) を中心とした文献調査により,現代のラテンアメリカ地域における家事労働者の実態について概観をおこなった。また、2015年度のメキシコで行った資料調査ならびにインタビュー調査をもとに、年齢層、教育レベル等によって異なる家事労働者の労働状況が分かった。調査によって得た知見から家事労働者の労働条件の改善や家事労働者条約の履行に、家事労働者組合の存在が大きな影響を与えているため、ラテンアメリカの家事労働者組合の状況について、ウェブや文献を通じて調査を行った。 また、近年ラテンアメリカにおいて家事労働者として働く移民女性の問題がクローズアップされている。特にラテンアメリカ域内の国際労働移動に着目し、域内で多くの移民を排出しているニカラグアを事例として研究を行っている。コスタリカで家事労働者として働くニカラグア女性移民労働者を調査するにあたり、移民を排出するニカラグア社会に関してその背景の調査を行ない、以下の業績を発表した:田中高編、『ニカラグアを知るための55章』明石書店、2016年において、第12章p.75-79、第27章から33章(p.149~185)を分担執筆した。 また、ニカラグアの女性の社会的地位に関して、ニカラグア女性の政界進出に焦点をあて、ラテンアメリカ学会第37回定期大会において、大会シンポジウム「ラテンアメリカにおける女性の政治坂とジェンダー・クオータ」(2016年6月5日、於京都外国語大学)を組織し、自身も「ニカラグア:女性の政界進出とフェミニズム運動」の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、①20世紀前半,②1950年以降1970年代を中心とする国内移動を主とする時代,および③1990年代以降の3つの時代区分に従い研究を進めるものである.①および②については,2016年度に国際機関の移民関係資料とともに,研究論文や新聞,報告書などの資料が豊富であるメキシコを中心に文献調査を行う.また,③については,女性移民が増大する1990年代の家事労働者の問題を調査する.2000年以降の現代の国際労働移動にともなう家事労働者に関しては,アメリカ合衆国およびメキシコ,ニカラグア,コスタリカを中心に現地のNGOを中心にインタビューを行い,家事労働者の実態について調査する.収集した資料の分析により,再生産領域の分業化の過程を歴史的に解明する予定である。 しかし、2016年4月に脳梗塞を発症し、緊急入院したが退院後、通院しながら経過観察を続けている。2016年度は経過観察中であるために、海外調査をひかえた。そのために、当初予定していた、メキシコ、コスタリカにおける家事労働者の調査を中断せざるを得なかった結果、当初より研究の進捗状況が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、ILOの資料の地域・国別報告書(Domestic Workers Across the World: Global and Regional Statistics and the Extent of Legal Protectionの国別報告2010年) を利用して、主に国内での文献調査により,現代のラテンアメリカ地域における家事労働者の実態について把握した。2017年度はメキシコにおいて夏休みを利用して2015年度の調査に引き続き、同様の調査をさらに行う。特に、2016年度に実施できなかった家事労働者と家事労働者組合の歴史資料の収集をメキシコ国立古文書館において行う予定である。さらに、メキシコ市において2015年に実施した家事労働者へのインタビューを継続して行う。最終年度には、コスタリカ、アメリカ合衆国における移民家事労働者の調査を行う。
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Causes of Carryover |
2016年4月に脳梗塞を発症し、退院後も通院し経過観察を行っている。そのため、2016年度夏に計画していたメキシコ、アメリカ合衆国への家事労働者の調査が実施できなかった。また、メキシコ市の国立古文書館において、予定していた資料収集をすることができなかった。以上の理由から、研究計画が遅れ、海外調査費が使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に計画したメキシコ市での資料収集と、家事労働者へのインタビューを2017年度夏に実施する。また、中米の移民家事労働者へのインタビューおよび家事労働者組合の調査は2017年度春に実施する予定である。 調査をまとめるため、最終年度に研究機関の延長を希望する。
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Research Products
(2 results)