2017 Fiscal Year Research-status Report
移住女性の「新移民コミュニティ」活動と社会的資本に関する国際比較研究
Project/Area Number |
15K01908
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 善姫 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (30546627)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民コミュニティ / ジェンダー / 多文化共生 / 継承語(母語)教室 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災以降の東北の結婚移住女性たちの「新移民コミュニティ」活動を通して、移住女性たちの地域社会への参画がどのように進み、それにより地域社会がどのように多様化していくのかを考察するものである。また、結婚移住女性の増加とともに、社会の多文化化を進めている台湾や韓国の事例と比較し、「新移民コミュニティ」の活動に必要な社会的資源を提言することを目標に研究を進めてきた。 本年度は、前年度で調査してきた東北の「新移民コミュニティ」の活動の追跡調査をしながら、韓国の結婚移民当事者たちの活動について、フィールドワークを行った。韓国ソウルで移住女性の自助組織として活躍している「センガクナムBBセンター」を訪ね、これまでの活動内容と経緯などを聞き取り調査した。また、日本人妻たちが自分たちの子どもに母語を教える「タケノコ」教室と歴史教室をフィールドワークすることもできた。いずれの活動においても、地域の「多文化家族センター」とのバックアップが大きな資源となっている。例えば、「タケノコ」の活動においては、場所の確報が困難だった時、多文化家族支援センターの場所を提供してもらうことにより、日本人移住女性たちの居場所として活動することができたとのことである。 これらの現地調査を踏まえ、国内で「東アジアの結婚移民と多文化」をテーマに東京と福島の研究会で報告を行った。また、共著の本として『国際結婚と多文化共生―多文化家族の支援にむけて』(明石書店、2017)を出版し、東北の結婚移住女性たちの30年間の新聞記録や地域社会独自の調査報告などを振り返りながら、東北の移住女性の「不可視化」と「他者化」を論じた論文も発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の調査対象である東北の「新移民コミュニティ」に関する調査は、研究代表者と「新移民コミュニティ」のリーダーたちとのラポール形成がしっかりできている中、順調に進められている。特に宮城と福島を中心に活動している「新移民コミュニティ」に関しては、年に数次かかわりを持ちながら、調査活動を行うことができた。移住女性だけでなく、「移住者の子ども」たちにかかわる活動(多文化子どもキャンプや継承語(母語)教室)にも参加しながら、参与観察を行っている。 他方、国際比較に関しては、主に韓国で同じく結婚移民たちのコミュニティ活動を調査し、比較を行うことができた。 ただ、そもそも計画していた台湾調査に関しては、通訳者の手配と研究代表者の日程調整がうまく行かず、当初予定していたほどの現地調査ができず、文献調査に止まることになった。さらに、研究最終年度に計画していた関連コミュニティによる「国際シンポジウム」が諸コミュニティとの日程調査がうまく行かず、次年度に繰り越されることになったことは、やや研究進歩に遅れが出ていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究代表者がこれまで調査対象にしてきた移住女性たちの「新移民コミュニティ」と移住女性支援団体の国際交流を図るため、来る5月12日と13日に福島県郡山市と東京都で国際シンポジウムを開催予定である。研究者たちによるアカデミックなシンポジウムにとどまらず、現場の当事者たちと実務者の声を聴き、研究者たちと意見交換をすることで、国境を超えた移住女性たちの社会参画のための議論の場として開催準備を行っている。当日のシンポジウムは、映像資料として記録を残し、必要に応じて報告書を作成する予定である。
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Causes of Carryover |
研究最終年度に計画していた国際シンポジウムを、参加予定の各団体との日程調整に時間がかかったことなどの理由によって、平成30年5月に開催することとした。それ故、研究費に残額が生じた。次年度使用額は、5月に韓国から4人の関係者を招聘する際の旅費とシンポジウム開催諸費用として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)