2015 Fiscal Year Research-status Report
ネパール社会における女性の社会参画とポジティブアクションの研究
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15K01910
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイエンス統合データベースセンター) |
Principal Investigator |
幅崎 麻紀子 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 准教授 (00401430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性の社会参画 / クォータ制 / ポジティブアクション / 女性の政治参画 / ライフヒストリー / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、女性の社会参画の歴史的経緯を文献調査により整理した上で、クォータ制の導入されているセクターにて社会参画を果たした政治家、役人、軍医として働く女性たち、及びその家族を対象として聞き取り調査を実施した。 国会議員として活動する政治家のうち、カトマンズに居住する現職の国会議員、元国会議員(政党員として政治活動中)、将来的に国会議員となることを希望する政党活動員の女性4名とその家族へ聞き取り調査からは、クォータ制によって女性が国会議員として政治活動に参画することができたこと、政治活動を行うことが家庭生活に大きな影響をもたらしていることがわかった。家族への調査では、政治家として活動する妻や母に対して肯定的なイメージを持っており、女性が政治活動を実施するために積極的に育児や家業を引き受けていることがわかった。また、女性たちにとって政治活動と母として妻としての役割を遂行することも重要な事柄であり、両立を図るためのキャリアプランを思い描いていることがわかった。 さらに、中央省庁でのポジティブアクションについての資料収集、および役所や軍で働く人を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、クォータ制として「民族」「女性」があるものの、ポストによっては「女性クォータ」を設けられていないことがわかった。またクォータ制で職を得た当事者は、「マイノリティ」ゆえに、クォータ制がなければポストを得ることは困難だったと感じていること、クォータ制にてポストを得たことを肯定的に認識していることがわかった。家族もまた、役所や軍にポストを得ることで、将来のキャリアが広がったことについて肯定的に捉えていた。 平成28年度は、調査対象を民間セクターへ広げるとともに、平成27年度に聞き取り調査を実施した女性たちへ、その後の社会活動や家族状況の変化についてのフォローアップ調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
繰越額発生の主要な要因は、聞き取り調査を電子メールにて補ったことがあげられる。また調査時期が政党内の選挙と重なってしまったため、議員の多くが郷里に戻ってしまっていたこと、及び役所や軍に勤務する対象者の場合、地方部へ出張していることも少なからずあったため、聞き取り調査活動に遅れが生じてしまった。 こうした状況を踏まえ、平成28年度はアポイントメント取りを含め、聞き取り調査の準備を早めにスタートしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した調査資料を整理・分析し、引き続き調査活動を行うと共に、民間セクター、および地方部へ調査対象を広げるとともに、平成27年度に聞き取り調査を実施した女性たちについても、フォローアップ調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、インフォーマントが政党内選挙を控え郷里に戻っていた、長期地方出張に出ていることもあり、聞き取り調査の日程が会わず、聞き取りを断念したケースがあった。また、政治経済問題に端を発するネパール国内の燃料不足のため、移動手段の確保が困難であり、治安状況も悪化したため、聞き取り調査に遅れが生じ、予算の一部を翌年度に使用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、調査の遅れを取り戻すために2回の現地調査を実施するとともに、現地の女子大学院生を助手として雇用し、聞き取り調査の段取りを早めに準備するなど、調査計画が予定通り進むように留意する。また、ソーシャルネットワーキングを活用して、国内での調査研究をも効率的に進める。更に、本調査研究の成果を、学会や研究会で発表する予定である。
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