2017 Fiscal Year Research-status Report
ネパール社会における女性の社会参画とポジティブアクションの研究
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15K01910
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
幅崎 麻紀子 埼玉大学, 研究機構, 准教授 (00401430)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 女性の社会参画 / クォータ制 / ポジティブアクション / ネパール / リプロダクション / 仕事と家庭の両立 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、女性の社会参画の状況と家庭役割との両立方法、特に、出産と子育てとの両立に焦点をあて、カトマンズ首都圏と地方都市との差異を明確にするため、カトマンズとタライ地域に位置するビルガンジにて聞き取り調査を行った。調査対象は就労している女性、特にクォータによって職を得た医師・看護師とその家族、近い将来就職を通じて「社会参画」が見込まれる看護学生とした。また、同時に、職を持たず、地域活動にも参画する機会の乏しい女性たちへも、「社会参画」の意思や可能性についての聞き取り調査を行った。 その結果、首都圏と地方との間に、差異がみられることがわかった。本年度、調査を実施したビルガンジは、インド国境に近く、ヒンズー系住民が多い地域である。相対的にみると、社会参画への関心を示している女性は首都圏に比べ少なかった。家族も本人も、家事を行い、子どもを産み育てる役割を女性が持つとの意識が高く、女性の行動範囲は居住地域に限定されて生活しており、社会参画への意思を持つ女性は少なかった。 一方、首都圏では、女性の社会進出が進んでいることもあり、特に、公的機関の医療職への女性の社会進出は著しく、そのきっかけとなっているのがクォータ制であった。そして、持続的な社会参画を可能にする要因として、乳児の保育施設の普及や高度生殖補助医療の普及が関係していることがわかった。すなわち、子どもを産み育てるジェンダー役割に高い価値を置きながら、職業行動を通して社会参画を継続し、両者を両立させようとする姿が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は前年度の反省を踏まえ、カトマンズ首都圏と地方都市にて調査を実施し、データを収集することができた。また、現地の協力者を得るとともに、SNSを駆使して、被調査者へのアポイントメントを事前に取ることができた。しかしながら、前年度までの進捗状況の遅れが積み重なり、予定している件数のデータをとることに時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、聞き取り調査にて収録した音声データの文字化を行う。その際には、ネパール語に堪能な人々の協力を得て、作業を速やかに行う。また、聞き取り調査で不明な点については、補充調査を行う予定である。また、収集したデータの分析を行うとともに、学会発表及び論文投稿を予定している。そのための準備と執筆作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
データ収集のために、現地を複数回訪問することを計画していた。また、複数の地方都市での調査を予定し、そのための旅費を確保していた。しかし、日程調整の結果、現地訪問回数が1回となってしまったこと、1地点の地方都市しか訪問することができなくなってしまったため、旅費に差額が生じてしまった。また、調査時期が遅れたため、データのテープ起こし作業が、本年度内に間に合わなくなってしまい、テープ起こし謝金に差額が生じてしまった。 本年度は、昨年度に収集したデータを文字化する作業を行うとともに、データ分析を行う。データ文字化作業については、現地の女子大学院生、在日ネパール人の方々の協力を得る予定であり、そのための謝金を支出する予定である。また、不明瞭な部分については補充調査を行い、調査データの質を高める。その上で、研究の成果を報告書としてまとめるとともに、学会での口頭発表と学会誌への論文投稿を行う。それゆえ、科研費を、学会参加旅費、補充調査旅費等に充てる予定である。
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