2016 Fiscal Year Research-status Report
パラグアイにおけるBOPビジネスのジェンダー研究:シングルマザーの雇用と国家戦略
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15K01912
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤掛 洋子 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (70385128)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シングルマザー / 日系企業 / ジェンダー / 国家戦略 / パラグアイ / マキラドーラ / ソナフランカ / 労働力の女性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は統計データ(賃金・雇用・貧困率等)の分析を行うとともにパラグアイにおいて2度の現地調査を実施した。現地パラグアイでは日系企業2社を訪問し、経営側へのインタビューを行った。また、女性省、企画庁、商工省、中小企業省、司法労働省・職業訓練センター、教育省、農牧省普及局を訪問し、多国籍企業の展開やシングルマザーへの支援のあり方などについてインタビューを実施した。さらに、インターネットやSNSを通じたインタビューも実施した。現地調査は研究代表藤掛洋子と研究協力者大西星川ウイルソン秀次が行った。研究協力者佐藤鈴木誠吾セルヒオはインターネットを活用したヒアリング調査を行った。 パラグアイとブラジルの国境付近にあるマキラドーラ(maquiladora)の存在が日系企業を含めた民間企業のパラグアイへの進出を後押ししたことは昨年度の調査で明らかにした。今年度の調査の結果、税制度が隣国ブラジルと比較するとパラグアイが極めて優位であること、すなわち企業にとって好条件であることが明らかになった。一方、国家開発戦略の中にジェンダー視点は十分には含まれていないことが明らかになった。 パラグアイの女性世帯主世帯の比率は総世帯主の3割であり、ひとり親世帯の8割が女性である(2011年)。このことから、シングルマザーの課題については女性省や教育省、司法労働省・職業訓練センターなどの省庁関係者も強く認識をしている。2001年と2011年を比較すると女性の絶対的貧困指数は上昇しており、2010年以降のパラグアイの経済成長がシングルマザー層、ひいては絶対的貧困層にまで裨益していないことが推察できた。なお、労働力の男性化は零細企業では指摘できたものの、日系企業では女性労働者の割合が高いことが明らかにあった。女性の雇用は増加しているものの「女女格差」(藤掛 2015)が生まれていることが改めて指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究で実施すべき調査ならびに明らかにすべき内容の以下6点であった。①F社に加え、Y社他への聞き取りを実施する、②国家政策・ジェンダー政策の確認、③統計データの分析、④企業経営者へのヒアリング、⑤雇用者たちの語りの分析、⑥農村女性への継続したインタビュー、である。これら6点は概ね明らかにすることができた。 F社以外の日系企業においてもシングルマザーの雇用を「戦略的」に行っていることが明らかになった。また、これらの聞き取りを通し、シングルマザーの課題以外にも中間管理職の人々が直面する課題を発見するに至った(副産物)。この課題は「労働力の女性化」と構造的には共通点があると考えられることから、最終年度である3年目にはこの点も含め考察を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までの研究計画は予定通り遂行できた。今年度は現地においてシングルマザーの方々への更なるインタビューを行うとともに、省庁関係者や企業関係者への落穂拾いのためのインタビューを実施する。また、研究成果の公表ならびに論文執筆投稿を行う。2017年6月4日にはラテンアメリカ学会においてパネル報告を実施する(研究代表:藤掛洋子・研究協力者:小谷博光、研究協力者:佐藤鈴木誠吾セルヒオ)。さらに途上国や新興国におけるBOPビジネスや企業のCSRについて理論的考察を深めるとともに、パラグアイにおけるシングルマザー(社会的弱者と位置づけられる方々)の雇用戦略が当事者のエンパワーメントにどのように貢献しているのかを明らかにする。以上を踏まえ3年間の調査結果を研究成果として公表していく。
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Causes of Carryover |
当初の予算見積もりよりも節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査研究費用に充当する。
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Research Products
(9 results)