2016 Fiscal Year Research-status Report
初期放射線科学と女性-マリー・キュリーの後継者たち
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15K01914
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20262941)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マリー・キュリー / イレーヌ・キュリー / ジェンダー / 放射能研究 / 湯浅年子 / 女性科学者 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もマリー・キュリーについての講演が多数あり、なるべくキュリー本人だけでなく、彼女が所長を務めていたラジウム研究所とそこにいた女性の弟子たちについても話をした。特に名古屋女性会館では、孫弟子の湯浅年子について単独の講演ができ、科学と女性について広く考える機会を聴衆に提供できたと思う。そのほか、あとにのべる湯浅論文ともども、「後継者」研究の進展と啓蒙に貢献できたと思う。 論文では、パリで発見した湯浅年子の資料をまとめて、まずは日本語で発表することができた。湯浅はキュリーの弟子のジョリオの弟子なので、ここれはジョリオとその時の女性の同僚についても考察した。ここでは、フランスの状況だけでなく、戦後すぐの日本における放射能研究所実情と女性研究者のおかれた状況を詳しく考察することができた。また、キュリーの最初の日本人弟子、山田延男と湯浅年子について比較した英語の論文を完成し、欧文雑誌に送り、最近審査が通過したので、2017年度に出版予定である。さらに、先の科学研究費において出版した『マリー・キュリーの挑戦』(トランスビュー・2010)の改訂版を出版した。ここでは、この科学研究費の成果も取り入れることができた。 この年度は、キュリーの「孫弟子」として、さらにビアンカ・チューバという新たな女性科学者の存在を知ることができた。チューバはキュリーの弟子のカトリーヌ・シャミエの教え子で、優秀な化学者であった。2016年11月に、1981年度のノーベル化学賞受賞者ロアルド・ホフマン博士から、キュリーすら落選したパリの科学アカデミーの化学部門初の女性科学者エイゼンシュテインを紹介され、そのエイゼンシュテインから科学アカデミーのしくみと、チューバについてのインタビューを行うことができた。今後は本研究にチューバも射程に入れる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キュリーの女弟子についてのデータベースはだいたい作ることができている。ただ、なかなか男性の弟子までに手が回っていない。ただ、日本人の山田延男については出身大学の東北大学理学部の同窓会などからも資料を得ることができているし、あらたにビアンカ・チューバの存在を知り、資料を得ることができたので、その部分の埋め合わせはできたと思う。しかも、山田と湯浅についての英語論文の発表が決まったので、(特に山田について英語で公表される論文はこれが世界初)これは近代日本の科学政策の一環を世界に知らせることにもなるので、よかったと思っている。湯浅についても、日本語の草稿が親族の手にあり、研究を進めるのが難しかったのだが、パリで新しい文書を発見し、世界で初めてそれを読んだ研究者としてその内容を発表することができたので、これは当初予想もしなかった大きな成果であると思っている。予想外なことは、ビアンカ・チューバの存在を知ったこともそうである。ホフマン博士はチューバと実際にあったこともあるということで、2017年度にこのことで本格的にホフマン博士のインタビューを行う予定である。また、科学上の弟子ではないが、キュリーの次女エーヴのキャリアがはっきりわかる伝記が出版され、それをもとにして『マリー・キュリーの挑戦』のその部分を大きく書き直したことは、戦前における女性のキャリアの多様性を示すものとして意味があったと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
キュリーの男の弟子のデータ、特に女性の弟子との寿命の違いを知るためのデータベースを作成したいと思う。これは、女性の弟子の寿命が当時の平均寿命より長いので、放射線障害の個人差の大きさを示すデータとして使っているのだが、はやり男性のデータもないと中途半端なので、この意味でも今後これを進めたい。 パリで発見した湯浅の資料は大変貴重なものなので、これもまた英語論文にして発表しようと考えている。昨年度に出した湯浅の英語論文は、むしろ「紹介」的な意味のものであり、本格的「論文」ではない。この資料については、「論文」として書きたい。しかも、この資料は、ジェンダーを超えた終戦直後の国際的な科学者の協力体制を証明する資料なので、ジェンダー平等推進の上からも、ぜひとも英語で発表したいと思っている。 また、終戦直後に戦後に湯浅が日本語で書いたラジウム研究所の女性たちの様子「自然に研究する女性科学者像」というものこそ、男女共同参画における理想の状況である。これを可能にしたマリー・キュリーのラジウム研究所の意味について、あらためて単独に論文にしたいし、この事実は、リケジョ応援の講演や一般向けの文章などでも強調していきたいと考えている。 この意味でも、2016年度に引き続き、2017年度も、キュリーについての講演があれば、積極的に受けるつもりである。 上にも書いたが、今年度にもホフマン博士が来日するので、今度こそゆっくりとビアンカ・チューバについてインタビューし、この女性科学者の業績についてなんらかの資料をまとめたいと考えている。チューバは移民でもあるので、昨今の国際情勢もかんがみて、チューバを「移民女性と科学」という角度からとらえることも可能であると考えている。これは、理由は結婚であるが、やはり国を移って科学者になったマリー・キュリーの立場でもあり、女性と科学と国家について考察するよい材料になりうると思う。
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Causes of Carryover |
昨年度は秋に体を壊し、11月半ばから12月いっぱいなかなか研究ができなかった。1月になっても出張など計画していたものが、体調不良のためにほとんどできず、予算が余ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は体調に気を付け、予定の出張をきちんとこなす予定である。
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Research Products
(8 results)