2017 Fiscal Year Annual Research Report
Gender Analysis of Social Organization of Labor: Focusing on Child Care Workers as Agency
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15K01921
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
萩原 久美子 下関市立大学, 経済学部, 教授 (90537060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 労働運動 / ケア労働 / 女性職 / 保育 / 公共セクター / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は公的保育制度の再編によって誘発されたローカルなケア供給体制の変化とそこで生起するケアと労働を巡るジェンダー間・内部の分業の再編過程を解明することにある。本年度は経済成長という政策フレームのもとでのジェンダー平等戦略という観点から初年度、および次年度を中心とする日本での調査分析で得た知見を深めることを目的にシンガポール、アメリカでの調査、分析を進めた。 シンガポールでは営利企業・民間セクターを主要なケア供給主体とする市場メカニズムが有効に機能していると考えられている。しかし、明らかとなったのは国家と一体的なPFCおよびコーポラティズムの下での労働組合が主要な保育供給主体となっていること、それにより市場に対する国家の影響力を維持する一方、労働組合NTUCが保育士の処遇等に関する国家への影響力を発揮する体制が形成されていることであった。しかしながら女性労働力の動員過程の分析から明らかになるのは、保育政策がケアの脱ジェンダー化を促進しているわけではなく、むしろ外国人家事労働者を底辺とするケアのジェンダー内分業と階層化を埋め込んでいることであった。 一方、アメリカ調査では南カリフォルニア州において公共部門の介護、保育労働者の組織化を進める労働組合SEIU、UDW、ファミリーデイケアの保育者のインタビューを通じて市場中心の供給メカニズムにおいては公的資金がケア労働者に直接給付されるルートがなく、保育労働者による労働組合等を通じた集団的発言チャンネルが排除されていることから、労働条件の改善が困難なジェンダー化された労働へと押し込まれていくことが明らかになった。 日本においても公的保育制度の再編が公共部門の女性雇用の棄却とそれによる保育労働者の集団的発言力の低下に結びつく場合、ケア労働の編成は再ジェンダー化され、女性内部のケアと労働の階層的分業が進行することを実証することができた。
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