2015 Fiscal Year Research-status Report
韓国における結婚移住女性の政治的主体化ートランスナショナルな組織活動を中心に
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15K01922
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
徐 阿貴 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (90447566)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移住女性 / 結婚移民 / 政治参加 / 韓国 / 多文化 / 組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国における結婚移住女性のトランスナショナルな組織連帯の展開について、多文化および女性政策、社会運動との関わりから明らかにする。とくに政治参画に関する活動に焦点をあて、移民女性のシティズンシップ、ネットワーク、エージェンシー等の視角から検討を行うことを課題とする。2015年度の研究活動は以下のとおりである。 1.東アジアにおける結婚移民増加の背景と動向に関し先行研究の検討を行った。分析視角としては、社会資本としての移民ネットワーク、政治的機会構造、ポストコロニアルフェミニズムによるエージェンシー概念に注目している。韓国の結婚移住女性のケースは、男性中心的な移民エスニック組織、労働運動を中心とする移住女性組織とも異なる組織化のパターンを示すものとして重要である。 2.ソウルおよび京義道で調査を実施した。トランスナショナルな移民組織のうち、政策関与に強い関心を持つ団体を対象にインタビューと参与観察を行った。選挙研修院や女性団体による移住女性リーダーシップ育成事業に関するデータも収集し、移住女性の社会活動の拡大を支える社会基盤整備について把握した。 現地調査では、移住女性による社会活動の多角化、トランスナショナル化が進み、コミュニティとの結びつきの強化と政治的関心の高まりを確認できた。当初の出身国別の自助グループから、よりトランスナショナルな移民女性組織に発展したことで、公的機関や支援団体、地域社会との交渉力が高まったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における重要課題として、先行研究の整理と理論検討を行い、本研究における分析視角を確定することができた。韓国調査では、関連団体や機関とのラポート形成およびデータ収集をほぼ計画通りに行うことができた。学会や国際会議で成果の一部を発表し、移住女性の政治参加という研究テーマを提起するとともに、有益なコメントを得ることができた。移民ディアスポラの会議では、日本におけるコリアン女性と韓国の移住女性によるトランスナショナルな運動をポスト冷戦東アジアという文脈から考察を行い、各国の研究者と知見を共有できたことも大きな収穫であった。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果をもとに、2016年度は現地調査によるデータ収集により一層の力を注いでいく。ソウル都市圏に加え、地方のケースを得ることで、データの多様化と全国的な動向把握に努めたい。現地調査と並行して学会発表を行い、コメントをもとに研究課題の深化をはかる。分析結果をもとに試論的な論稿の執筆を進める。移住女性の政治参加のための基盤整備にむけて、実践面でのフィードバックも重視する。
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